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地震対策 3ケース具体化へ 南海トラフ見直し

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地震学者らが集まる判定会の定例会=東京都千代田区で2016年12月26日 拡大
地震学者らが集まる判定会の定例会=東京都千代田区で2016年12月26日

 南海トラフ巨大地震の防災対応を検討してきた国の中央防災会議の作業部会が8月、地震予知を前提とした大規模地震対策特別措置法(大震法)に基づく対応は見直しが必要とする報告書案をまとめた。近く正式決定され、これまでの対策が変わる。

 ●予知困難、明確に

 大震法は「東海地震がいつ起きても不思議ではない」との説が発表されたのを受け1978年、南海トラフで発生する地震のうち東海地震を対象に施行された。特徴は、2~3日以内の東海地震発生を予知できると特別扱いしている点だ。予知した場合は、首相が警戒宣言を発表し、国や自治体は地震発生前の住民避難、鉄道停止、金融機関閉鎖など、強制力を伴うさまざまな規制をかける。

 しかし、地震学が進歩する中で予知は難しいことがはっきりしてきた。ひずみ計で地下の変化を監視している気象庁は、異常があれば地震防災対策強化地域判定会(判定会)を開催し、前兆現象かどうかを判断して予知を試みる。だが、地下の変化が地震につながると確実に言えないことなどが明らかになってきた。

 ●モデル地区選定へ

 今回、作業部会の下に組織された調査部会の座長、山岡耕春(こうしゅん)・名古屋大教授は「現時点で、地震の発生時期や場所、規模を確度高く予測する科学的手法はない」との見解を示した。つまり、2~3日以内の発生は予知できず、大震法の仕組みは成り立たないことを明言した。それでも作業部会は、直前の予知ではないが、南海トラフの地震を推測できる可能性があるとして、四つのケースで防災対応を検討した。

 ▽ケース1

 南海トラフの東の領域で大地震が発生した場合。1854年の安政東海地震では32時間後に、1944年の昭和東南海地震では2年後に、西の領域でも大地震が発生した。同様に連発する可能性があるとして、住民避難を含む応急対策を取る必要があると指摘した。

 ▽ケース2

 南海トラフで想定よりは小さいマグニチュード(M)7クラスの地震が発生した場合。その後にさらに大きな地震が起きた例は過去に知られていない。しかし、M9・0の東日本大震災で2日前にM7・3が発生した例があり、事前避難などを考える必要があるとした。

 ▽ケース3

 地震回数の減少など東日本大震災前にみられたのと同様のさまざまな変化が観測された場合。短期的な大地震発生につながると判断できず、防災対応に生かせないと位置づけた。

 ▽ケース4

 東海地震予知のための気象庁の観測で変化を捉えた場合。現行の大震法が想定する事態だ。事前避難を求めることは難しいが、行政が警戒態勢を取るきっかけになる、とした。

 大震法の仕組みは今後見直されるが、警戒宣言の存廃、各ケースの細かな取り決めなどの検討が課題として残っている。国はまず、モデル地区の自治体を複数選定し、ケース1、2、4で具体的な防災対応を検討する。さらに自治体などが対応を決めるためのガイドラインを策定する。

 作業部会は、現在の地震学の水準に見合った防災のあり方を議論してきた。四つのケースが起きないまま大地震が発生したり、各ケースが複合的に起きたりすることも報告書案に記した。「地震はいつどこで発生するか分からない」ことを前提に、防災に取り組むことが重要であることを鮮明にした。【飯田和樹】

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