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「おひとりファースト」の時代へ~ミドルおひとり女子が創る、大独身マーケット

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「おひとりファースト」の時代へ~ミドルおひとり女子が創る、大独身マーケット

第2回 ミドル婚活と「アラフィフ婚」が増えた理由=マーケティングライター・牛窪恵

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 40、50代の独身女性、「ミドルおひとり女子」。前回、彼女たちの間で、いま「アラフィフ婚活」が熱い、と書いた。なぜ私がこの傾向に注目したのか? それは、かつて「女性は、30代までに結婚するのが当たり前」「それ以降は、婚活などしないだろう」と見られていた時代には、経済活動の面からも、ほとんど存在しなかったマーケットだからだ。

 対するいまは、「いつかは結婚したい」と考える40代の未婚女性が、およそ4人に1人。50代でも、約12%にのぼる(2016年 ダイヤ高齢社会研究財団調べ)。昨今、若い世代の婚活がインターネットやSNSにシフトしていることもあって、結婚情報サービス業界も軒並み、この「ミドルおひとり女子」に注目。新たなサービスも続々と生まれているのだ。

「ウェディングドレスは、相手(新郎)がいてこそ着られるもの」。そんな常識を覆したのは、株式会社結婚情報センター「ノッツェ」(東京都新宿区)。15年秋、「やまとなでし婚」、すなわち幸せな家族を築く、強く賢くしなやかな「現代のやまとなでしこ」を育てるカリキュラムの一環として、女性が一人でウェディングドレス姿の写真を撮影する、いわゆるソロウェディングを始めた。

 ヒントになったのは、女性客専門の旅行会社「チェルカトラベル」(京都府京都市)が14年に売り出した、ソロウェディング(現在は終了)。私も以前取材したが、ドレス選びからブーケ作り、京都での写真撮影など1泊2日のプランで、費用はなんと30万円を超えていた。それでも、16年9月までに約150人が利用する人気プランだったのだ。

 他方、ノッツェの「やまとなでし婚」【写真1】は、婚活相談や恋愛カウンセリング、ドレス選び、ヘアメイク、写真撮影まで4人のブライダル精鋭スタッフが付き添う手厚さで3万円超と、かなりお得だ。こちらは不定期開催で、これまで6回実施されたのみだが、参加者21人のうち11人、なんと半数以上が40、50代の女性とのこと(17年7月末現在)。「ミドルおひとり女子」にも、しっかり響いている。

=写真1
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「われわれの業界には、すてきな40、50代の独身女性がたくさん訪れます。皆さん、ふだんはお仕事などで『色気を出しちゃいけない」など、女性性を隠している場合が多い。もったいないと思うんです』と話すのは、結婚情報センター・営業本部セミナー事業部の芦澤早苗さん。

 彼女いわく、ウェディングドレスには女性を幸せにするパワーがあるという。アラフィフ婚活にトライする女性は、自己肯定感が低いケースもあるそうだが、「ドレスを着ることで、女性としての“幸せの種”を育てるきっかけにしてもらえたらうれしい」。

 では実際、アラフィフ婚活に乗り出す女性は、どんな思いを胸に秘めているのか。

阿川佐和子さんの「アラカン婚」に共感!

 2年前、3歳年上のバツイチ男性と結婚したA子さん(53)は、こう話す。「女として『別の人生』を生きてみたかった。このままで終わりたくなかったんです」。

 50歳までで、仕事については「だいたいこんなものか」と分かった。でも人生は長い。今後、穏やかな老後を誰と過ごすかを考えたとき、「女としていたわってくれたり、くだらないことを笑い合えたりするパートナーが欲しかった」という。

=iStock
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 その意味で、今年5月に「アラカン(60歳前後)婚」を果たした、エッセイストの阿川佐和子さん(63)の新聞紙上でのコメントを呼んで、「私と同じだ!」と強く共感したというA子さん。透けるように肌が美しく、アラフォーぐらいに見える彼女だが、次の言葉を聞いた瞬間、私は腰が抜けるほど驚いた。

「どうしても、一度は結婚したかった。だから20年以上勤めた会社をすっぱり辞めて、周りにも自分にも『本気で婚活する』と示したかったんです」。

 勤務していたのは、女子大生の多くが「入りたい」と憧れる大企業。にもかかわらず、彼女は組織改変を機に3月末で会社を辞め、翌4月には2カ所の結婚相談所に登録した。その本気ぶりが周囲を動かしたのだろう。6月には知人に「いい男性がいる」と紹介され、51歳で結婚を決めたのだ。

 一方、長野県で家業(不動産業)の役員を務めていたB子さん(51)は昨年、出会ったばかりの男性にみずから告白し、つい先日籍を入れた。告白は、人生初の試みだったという。 

 お相手は、介護福祉士の男性。5年前、父親が病に倒れ、会社が休眠状態に追いやられたとき「一緒に頑張りましょう」とやさしく声をかけてくれた。周りは、「なぜ50歳にもなって、自分より年収が低い男性と?」と猛反対したが、彼だけが父親の事業ではなくB子さん本人を、一人の女性としてみてくれたという。

 20代のころは、バブル真っ盛り。わざわざ東京の高級ホテルに出向き、親が「条件」でお膳立てした相手と次々にお見合いしたが、どの男性にもひかれなかった。恋愛トレンディドラマに憧れたわけではないが、「条件や家柄は関係なく、一人の人対人として愛し合ってこそ、一生涯のパートナーでしょう」とB子さん。その後は長野からほとんど出ることなく、仕事と趣味の生け花だけに没頭してきたという。

 伴侶となった男性に抱く感情は、恋愛とは違う。「もっと穏やかで、互いにいたわり合いたいという、温かい気持ち」。先のA子さんも、「正直言ってドキドキはしないけど、ふと目が合ったり、手をつないだりするだけで癒やされる。死ぬ瞬間は彼に看取って欲しいと思ったから、あえて籍を入れたんです」と話す。

 婚活男女のバスツアー(ハピネスツアー)を展開する株式会社スターツーリスト(大阪府大阪市)の広報担当・尾尻昌弘さんによると、最近は50代以上の参加者が確実に伸びており、とくに女性の申込者が先行するケースが多いとのこと。「彼女たちの多くは積極的。みずからの人生の幅を広げるような相手との出会いを探している」。

 一方、婚活支援サービス・株式会社パートナーエージェント(東京都品川区)の広報担当・平田恵さんも、「50代女性が求めるのは、生涯『人対人』として向き合えるパートナー」だとみる。同世代の男性はというと、じっくり話せば決まって「若い子(女性)がいい」との本音が垣間見える、とのこと。ただ、根底にはやはり女性と同じ傾向、すなわち「人対人」を求める思いが強くあるという。

 ほかにも、株式会社ツヴァイをはじめとした結婚情報(紹介)サービスの登録者は、全女性会員のうち2割近くかそれ以上を45~54歳が占めると言われ、その数は「10年前の3.3倍」とも報じられている(デジタル版「女性自身」=光文社=2017年8月23日)。女性の社会進出の先駆けとなった、いわゆる「均等法(男女雇用機会均等法)第一世代」が、ちょうど彼女たちに当たるのだ。

 ときに女性性を奥にしまって働き続けてきた「ミドルおひとり女子」。彼女たちはいま改めて仕事とは離れて、「女として」「一人の人間として」のこれからの人生を見つめ直しているのかもしれない。

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