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段ちゃんの「知っておきたい!中国のコト」

第3回 中国人観光客はマナーが悪い?=段文凝

過去最多! 増え続けている訪日中国人旅行者

 今年(2017年)8月に日本政府観光局(JNTO)が発表したデータ によると、17年7月の訪日旅行者数は、去年の同じ月と比べて16.8%増えて268万2000人となり、1カ月の記録としては過去最多となったそうです。このうち、中国からの観光客数は78万800人で、他の国と比べても一番多く、かつ、過去最多を更新したとのこと。ビザの発給が緩和されたことや、個人旅行が増えたことが背景にあるそうです。

     私の中国にいる友達も「日本でラーメンが食べたい」とか「着物を着てみたい」とか「アニメの聖地を巡りたい」と、日本のことをよく話題にしています。実際に二度三度と日本に旅行に来ている友人もいます。今の中国人にとって、日本は身近で一度は行ってみたい国の一つになっているのです。

    中国人観光客のマナーの問題 “情報量の差”が原因

     しかし中国人観光客というと、メディアを中心に“マナーが悪い”というイメージで報道されがちです。私も同じ中国人として、毎回複雑な気持ちでこうしたニュースを見ています。確かに私も、電車やエレベーターの中で大きな声でしゃべったり、道幅いっぱいに広がって通行の邪魔になったりしている中国人観光客を見かけたことがあります。団体旅行で集団行動をしている観光客の中にこうした人がいると余計目立ち、その集団全体がマナーの悪い一団に見えてしまいます。

     その上で、長年日本で暮らす中国人として、私が気づいたことを少しあなたにご紹介したいと思います。キーワードは“情報量の差”です。まず定番の“団体旅行”で日本を訪れる観光客。こうした人たちは日本に来るのが初めて、もしくは2回目という人が多いです。年齢層も50代や60代以上とやや高め。日本に興味はあるけれど、あまり詳しくないので、添乗員や現地ガイドが常に一緒に案内をしてくれるツアー形式の団体旅行を選ぶのです。私の親世代もそうですが、こうした中高年の人々は、スマホの携帯アプリやインターネットを使うのが苦手、という共通点もあるようです。

     一方で、最近人気の“個人旅行”。ビザの緩和を受けて、一定の預貯金があれば比較的簡単に個人でも来日することができるようになりました。旅行者の目的は「個人的で感動的な体験」をすること。主に20代から40代までの比較的若い年齢層を中心に人気を集めています。こうした人々は、日本に来る前にスマホアプリやインターネットで、日本についての口コミ情報を集めています。「日本では公共の場所や交通機関の中で電話を使用してはいけない」「エスカレーターに乗る時は、片側に立って急ぐ人のためにスペースを空ける」など、基本的なルールもこうして知ります。また、個人旅行を選択する人は過去に何度か日本を訪れており、基本的なルールやマナーをすでに心得ている人も多いのです。

     このように、一言で“中国人観光客”と言っても、日本に対する情報量には差があります。当然、知らなければルールやマナーを守ることはできません。逆に知っていれば、わざわざそれを破ろうとする人はいないと思います。

    日本と中国のマナーの違い “お互いを知ること”で避けられるトラブル

     日本と中国は同じ東アジアの国同士で、見た目もよく似ています。けれども、やはり習慣や文化は異なります。例えばご飯を食べるとき、日本ではお茶わんを手に持つのが良いとされています。しかし、中国では食器を手で持つのはマナー違反です。また、外の店で買ったペットボトルなどの飲み物を飲食店に持ち込むのは、日本では特別な許可がない限りマナー違反ですが、中国では多くの店で基本的に許されています。こうした習慣や文化の違いを知らずに相手の国に持ち込んでしまうとトラブルが起きやすい、と私は思います。

     では、どうやってこうしたトラブルを避ければいいのでしょうか。私は“お互いのことをより深く知ること”が重要だと考えます。ここで一つ、日本に留学中の友人Aさんのエピソードをご紹介します。ある時、Aさんのご両親が日本に遊びに来ました。Aさんはご両親に「日本では公共の場や車両内、エレベーターでは絶対大声を出さないこと。日本人は知らない人と公共の場にいるときは静かにしているのがマナーだと考えるから、大声を出すと無礼にあたるよ」と伝えました。ご両親はこれを聞いて「そう言われれば、日本は中国に比べて狭い所に人が集まっている場合が多い。中国にいる時のように大声で話したら、確かに迷惑かもしれない」と納得して、滞在中、公共の場所ではとても小さな声で話していたそうです。それどころか、Aさんと3人きりでエレベーターに乗っていたときも、ご両親はひそひそ声でAさんに話しかけたので、Aさんは「今は他の人はいないから、大きい声を出してもいいよ」と笑ってしまったそうです。

     私はこの話を聞いて、とてもほほ笑ましく思いました。Aさんのご両親は、日本のマナーが中国とは違うことを知り、より良い旅行者であろうとして頑張りすぎてしまったのです。結果はどうあれ、Aさんのご両親が日本に滞在中ずっと、日本のことをよりよく知ろうと努力していたことが伝わってきませんか?

    日本に来るのは日本が好きだから

     ここまで、中国人観光客が増えている背景や、なぜマナーをめぐるトラブルが起きるのか私自身の考えをご紹介してきました。最後に、ぜひこれだけはお伝えしたいということがあります。それは、日本を旅行先に選ぶ中国人観光客は、ほぼ例外なく「日本が好き」だということです。世界にはたくさんの国があって、それぞれに魅力的な観光地があります。中国から見て、日本よりも近く、簡単に行ける国もたくさんあります。それでもわざわざ日本を選び、決して安くない旅行費を払って、旅行に来るのはなぜでしょうか。それは「日本が好きだから」にほかなりません。好きな国に来てわざわざその国の人に嫌われようとする人は、まずいないでしょう。それでもマナーをめぐるトラブルが起こってしまうのは、“自国とは違うルールやマナー”があることを、知らないからなのです。

     私は日本にこれから来る中国の観光客の皆さんに、ぜひ、事前に基本的な日本のルールやマナーをもっと知っておいてほしいと思いますし、受け入れる日本の皆さんにも、中国の習慣や文化について、もっと興味を持ってほしいなと思います。そうやってお互いがお互いをより深く知れば、きっと今より相手を理解でき、仲良くなれるはず。旅での出会いは、まさに“一期一会”です。私も故郷を離れ、日本に長く滞在している“旅人”の一人です。これからも私は、目の前の“あなた”を大切に思い、より深く知ろうとする人であり続けたい。一人でも多く、そんな気持ちでお互いを思うことができたなら、きっとたくさんの人が“両思い”になれると信じています。

    私も旅が大好きです。あなたにも私にも、良い出会いがありますように!

    段文凝

    (だん・ぶんぎょう)中国・天津市出身。2009年5月来日。同年まで天津テレビ局に所属。2011年4月より、NHK教育テレビ『テレビで中国語』にレギュラー出演。(2017年3月卒業)2014年早稲田大学大学院政治学研究科ジャーナリズムコース卒業。日中間を行き来し講演活動を行い、「かわいすぎる中国語講師」として幅広い層に人気を得ている。2015年、2016年に毎日新聞夕刊「ひ・と・も・よ・う」で取り上げられた。2017年現在、NHKWORLDのラジオにレギュラー出演。舞台や映画などを中心に女優としても活躍している。

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