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詩歌の森へ

花桃を咲かせる幹=酒井佐忠

 <花桃の木だから母をわれへ子へ次へ百年(ももとせ)継ぎてゆくべし>。中川佐和子の新歌集『花桃の木だから』(角川書店)の歌集名にとられた一首である。この歌の前にも、<母が何かいまだわからぬままなれどわが母の幹のつよさ見ており>という歌もある。花桃の木の幹は、すっくと真っすぐにつよく立っている。「母とは何か」といまだに自問しながらも、母から「われ」へ、さらに子に、百年つづく生命の不思議と「幹のつよさ」を作者は語る。

 中川は、歌誌「未来」選者、日本歌人クラブ中央幹事を務めるベテラン。個性的な感覚をもった河野愛子や近藤芳美に師事しただけに、社会的視座を常に抱える歌人でもある。だが、新歌集は、視点を高みからではなく、より日常的な場所に下して歌っている。<家去りし娘の気配ありたれば居間の手書きのメモをはがさず>。そんな生活のなかにも作者は、<遠くより眺めてさらに鮮やかな黒立葵そよがずに立つ>と、毅然とした心を確認す…

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