メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

ペットと飼い主一緒の墓に 葬祭業が続々参入

愛猫と家族の眠る墓に親子3代で手を合わせる一家。墓石には猫のイラストも=町田いずみ浄苑で

 ペットブームで犬や猫の飼育数が子どもの数を上回る中、「ペットと一緒にお墓に入りたい」と望む飼い主が増え、それにこたえてくれる霊園が人気だ。少子高齢化や過疎を背景に、先祖代々の墓地の無縁化が社会問題化する時代に、なぜ、ペットと入れる墓地が増えるのか。愛玩動物や人の「終活」の現場で今、何が起きているのか。【小国綾子/統合デジタル取材センター】

    建てるなら“家族”一緒に

     墓石に「Love Family」の文字と愛猫のイラスト。8月下旬、東京都町田市の「町田いずみ浄苑」に母親や息子ら親子3代5人で墓参りに来た都内の女性(43)は「『動物と一緒の墓は邪道』と言う人もいるが、せっかく建てるなら“家族”一緒の墓がほしかった」と語る。13年前、愛猫の死を機に家族で話し合い、この墓を建てた。約40年前に生まれてすぐ亡くなった妹のお骨も一緒に埋葬した。

     同苑の計約4500区画のうち、ペットと人が一緒に埋葬されている墓地は450区画を超えた。墓石には人の戒名とペットの名前が仲良く並ぶ。

     犬のイラストや足形が刻まれ、犬や猫の陶器で飾られた墓石も多い。墓石に刻まれる言葉は「愛」「永遠に」「絆」など人間の墓とさして変わらない。それでも「ありがとう」など感謝の言葉が人間の墓よりも多いようだ。

    父親は生前、碁盤に触られるのを嫌ったが、飼い猫たちには許した。墓には父親と、彼が世話をした猫4匹が一緒に眠る=メモリアルアートの大野屋提供

     奥多摩町の霊園に2年前、父親と猫4匹の遺骨を埋葬した都内の女性(64)は「父は今ごろあの世で猫たちの世話をしていると思います」と満足げに話す。

     父親が猫を飼い始めたのは定年退職後のことだった。子どもも孫も成長し、世話する相手のいない日々に、「人間は誰かを世話して生きたいものなんだ」と猫の面倒を見始めたのだ。碁の好きだった父親は、碁石を誰かに触られると怒ったものだが、猫にだけはそれを許した。

     1匹が死んだ時にはつえをついて火葬場に足を運んだ。

     そんな父親だったから、女性はペットと入れる墓を選んだ。父のため、碁盤と猫を模した墓石を特注した。ゆくゆくは自分もそこに入るつもりだ。

     「もう先祖代々、墓を守る時代じゃない。私が死んだ後は無縁化する墓ですので、30年後、桜の木を囲んだ集合墓地で永代供養してもらえる契約を選びました」。費用は200万円ほどかかったという。

    法律上は「一般廃棄物」

     かつて霊園は「ペット不可」が常識だった。ペットの死骸は廃棄物処理法上は「一般廃棄物」で、人間のように許可を得なくとも火葬も埋葬もできる。しかし仏教では動物を「畜生」と分類しており、人間と供養すべきではないという考えはいまだ根強い。

     ペットブームを背景に、ペット霊園は相変わらず人気だ。火葬や埋葬サービスは市場拡大の一途をたどる。

     しかし、数年前に火葬炉を搭載した車によるペットの訪問火葬で「広告の表示料金より高い料金を請求された」などのトラブルが多発し、社会問題になった。また、今年1月、大阪府枚方市のペット霊園が突然閉園となり、遺骨の回収ができない問題が発覚。飼い主たちを不安がらせた。

     環境省によると現在、全国約160市町村がペット霊園設置などについての条例を定めているが、さまざまなトラブルを知った飼い主が「ペット霊園では心配だから、ペットも人間のお墓で一緒に」と望むようになった面もあるようだ。

     <かけがえのない家族だから、お墓もいっしょ>のキャッチフレーズで、日本で初めて2003年、ペットと人間が入れる墓「ウィズペット」を売り出した葬祭業大手「メモリアルアートの大野屋」は「ペットが家族同然になる中、死後も一緒にいたいと考える飼い主が増えた」と背景を説明する。発売開始から数年後、爆発的に売れ、今では同業他社の多くが参入しているという。

    「檀家引っ越し」も

     東京・三田にある魚籃寺は、古くからペットのお骨を受け入れてきた。「ご本尊の魚籃観音菩薩は魚籃(魚をいれる籠)を持つ観音様。人も動物も同じ一つの命、と考え、ペットもご供養させてもらっています」と住職の山田智之さんは語る。

     「ペットの法要では皆さん、よく泣かれます。人間の法要の2倍も3倍も泣いている印象が強いです」と山田さんはいう。同寺の霊園には、犬や猫だけでなく、トカゲ、蛇、鳥も。犬や猫のカタカナ名に、飼い主の名字が添えられた墓石もある。

     人づてにうわさを聞き「うちの寺ではペットと一緒は無理だから」と、よその檀家から“引っ越し”してくる人もいる。檀家以外から「ペットと一緒に入りたい」と問い合わせがあった時、山田さんはまず「ご自分の菩提寺のご住職に相談して」と助言している。公に「ペット可」と掲げていない寺でも、檀家の思いをくんで対応してくれる寺院が最近は増えているという。

     「高齢化社会ですから。ペットも自分も年を取り、どちらのお迎えが先か、という時代。飼い主が先に亡くなった後、供養料などを託されたという知人や親戚がペットの納骨に来るケースも10件を超えています」と山田さん。

    「ペット信託」という“終活”も

     昨今流行している「終活」においても、ペットをどうするかが注目されるようになっている。ペットをいかにみとり、弔うのか。「ペット終活」なんて言葉まである。

     高齢者単身世帯の増加で、寂しさからペットを飼うお年寄りが増えている。室内飼いが増え、今や犬や猫も15年ぐらい生きるようになり、飼い主がペットをみとれないまま先立つケースも増えている。

     13年の動物愛護法改正で、飼い主にはペットを最後まで責任持って飼う「終生飼養」が義務づけられ、自治体はペットの引き取りを拒否できるようになった。しかし東京都福祉保健局によると、やむなく引き取る犬や猫の約6割が飼い主の死亡や病気によるものという。

     同局は昨年、「ペットと暮らすシニア世代の方へ」という冊子を高齢者向けに作製。次の飼い主を探したり、遺言を書き残したり、財産を残したりと、飼い主が先に死ぬことに備えるよう提案した。

     実際、ペットのための「エンディングノート」を書く飼い主も増えている。もしもの時に誰に飼育を託すのか。

     ペットの名前、性別、避妊・去勢手術の有無、持病やアレルギー、予防接種、ペットフードの銘柄などいつも食べている食事や量、回数、散歩の回数などを書き残しておくものだ。

     また、より確実な方法として注目されているのが「ペット信託」。飼い主が自分の死後に飼育してくれる人をあらかじめ決め、飼育費として残す財産の管理契約を結んでおく仕組みだ。

     日本で初めて「ペット信託契約」を作成した福岡市の行政書士の服部薫さんは「契約は20例ほどだが、現在、問い合わせが全国から毎月30件ほどあります。菩提寺(ぼだいじ)にあらかじめ許可を取っていただく必要はありますが、過去にも、ペットが死んだら菩提寺に入れて一緒に埋葬してほしい、という内容を盛り込んだ契約を作成したことがありました」と話す。「先祖代々の墓にペットを埋葬することを家族に反対されたので、自分とわんちゃんとだけの墓を建てたい」などの相談も受けたという。

     ペットに残す金額については「医療費や食費やペットの平均寿命などから算出しますが、1匹あたり200万~300万円であることが多い。信託を交わした後でも、飼い主がペットをみとることができれば、お金は飼い主さんさんのもとに戻ってくるような契約にもできます。死後だけでなく認知症や病気による入院などいろいろな事情でペットと暮らせなくなる場合にも、ペット信託を活用できるので、作成しておくと安心してペットと暮らすことができるのです」と説明する。

    時代は「モラル」から「メモリアル」へ

     お墓事情に詳しい第一生命経済研究所の小谷みどり主席研究員は、ペットと一緒にお墓に入りたい飼い主の増加について「単なるペットに対する考え方の変化というよりは、人間の墓や弔いに対する考え方の変化が背景にある」と見る。

     「かつて先祖代々の墓を守ることはモラルでした。今はむしろ個人の思いを大事にした追慕、つまりメモリアルが重視されている。だから顔も知らない先祖の墓は無縁化する時代にも、ペットと一緒に埋葬されたい、ペットを大切に弔いたいと新しい墓を建てる人が増えているのです」

     ペットの法要では、親子3代で参列する光景もよく見られるという。「今どき、祖父母の七回忌ともなれば孫までは参列しないでしょう? ところが、ペットの七回忌には世代を超えてやってくる。人間の法要より、複数世代の参列が多いそうです。墓石に“ありがとう”の感謝の言葉が多いのも、夫婦や親子、家族の縁を結んでくれた愛すべき存在への感謝の思いなのかもしれません」

     モラルからメモリアルへ。あなたは愛犬や愛猫を、どんなふうに弔いますか?

    関連記事

    毎日新聞のアカウント

    話題の記事

    アクセスランキング

    毎時01分更新

    1. 公明 「裏切られた」小池氏の新党代表就任に反発
    2. 大阪府警 20代の女性職員、キャバクラで勤務 処分検討
    3. 特集ワイド 「大義なき衆院解散」で失われるもの 議会制民主主義、本旨どこへ
    4. 北朝鮮 「むかっとしてミサイル」 元料理人に正恩氏発言
    5. 小池新党 「集まってきた人、選挙に勝ちたいだけ」

    編集部のオススメ記事

    のマークについて

    毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです

    [PR]