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毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

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先ごろ、NHKの番組「ブラタモリ」が日本地質学会に…

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 先ごろ、NHKの番組「ブラタモリ」が日本地質学会に表彰されたのが話題となった。地理好きのタモリさんが各地を訪れ、地域の自然と人のなりわいのかかわりを探る番組が地質学の普及に貢献したというのだ▲「柱状節理(ちゅうじょうせつり)」という地学の用語もこの番組で知った方がおられよう。たくさんの角材を束ねたような岩の形で、溶岩が冷えて固まる時にできる。ブラタモリでは水を混ぜたかたくり粉を乾かす実験で、柱状のヒビが入るさまを見せた▲この列島の自然景観の成り立ちや、そこで営まれた歴史への関心がいつになく高まっているのをうかがわせる番組の人気である。だがそんな世のトレンドなどどこ吹く風、物事を予定通り進めることしか眼中にない人々もいるようだ▲ユネスコの世界ジオパークとなった熊本県の阿蘇だ。そのジオサイト(見どころ)の一つ、立野峡谷の柱状節理が熊本地震の復興工事で幅110メートルにわたり破壊された。崩落した阿蘇大橋の架け替えのため国が進めていた工事だった▲削られた柱状節理の現場写真はいかにも無残である。こと立野峡谷の柱状節理についてはダム建設にともなう破壊や水没も心配されている。ジオパーク--「大地の公園」にあって国がこうまで大地からの贈り物を軽んじていいのか▲立野峡谷は阿蘇の神、健磐龍命(たけいわたつのみこと)が外輪山を蹴破って水を流し、カルデラ湖を田畑に変えた伝説の地という。大地と人が織りなしてきた「記憶」をないがしろにして、果たして「復興」などありえるのか。

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