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長部日出雄の映画と私の昭和

「ゴッドファーザー」(米国・1972年)

 約2年半の津軽住まいを終えて再上京した昭和47(1972)年に強烈な衝撃を受けたのが、米国のマフィア社会の恐るべき全貌をきわめて劇的に描いた「ゴッドファーザー」だ。原作は作家マリオ・プーゾの大ベストセラーだが、映画化となれば、当然イタリア系移民の暴力団であるマフィアとの軋轢(あつれき)が予想されるから、演出は会社側が候補に選んだ何人もの監督に断られ、血筋と名前がイタリア系という理由で監督としてはまだ無名に近い32歳のフランシス・コッポラに白羽の矢が立った。もし先に交渉されただれかが引き受けていたら、私たちが接した非凡な映画は誕生していなかったのだ。

 オファーを受けた時「大衆的なベストセラーの映画化なんかやりたくない。僕が作りたいのは芸術的な映画なんだ」とこぼしたコッポラに音楽家の父親は言った。「じゃあこの映画で儲(もう)けてその金で芸術映画を作ればいいじゃないか」。父の助言に従って仕事を引き受けたコッポラが早速実行したのは、大衆的な娯楽作を交響楽のような芸術映画に仕立てることで、製作者に無理難題を連発した。

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