連載

幸せの学び

毎日新聞デジタルの「幸せの学び」ページです。最新のニュース、記事をまとめています。

連載一覧

幸せの学び

<その178> 絆結ぶ信州の高校生=城島徹

  • ブックマーク
  • メール
  • 印刷
ボランティア部の太田和也さん、及川紅羽さん、田代直己さん(左から) 拡大
ボランティア部の太田和也さん、及川紅羽さん、田代直己さん(左から)

 南信州・伊那谷の長野県松川高校(松川町)ボランティア部の生徒たちが東京のアンテナショップ「銀座NAGANO」に現れた。東日本大震災の津波に襲われた宮城県石巻市の海岸で生き残ったハマナスと町特産のリンゴを使ったクッキーを絆のシンボルとして紹介し、「被災地を忘れない」という活動への思いを語った。

 「石巻市の被災者に松川のリンゴを届けたいので協力してくれませんか」。震災のあった2011年の秋、町内に住む満蒙開拓平和記念館の寺沢秀文副館長はボランティア部顧問の菅沼節子先生から生徒の思いを伝えられた。菅沼先生は毎年12月8日の日米開戦の日に「満蒙開拓」の語り部を招く授業を続けており、その打ち合わせでのことだった。

 松川町のある飯田下伊那地域は全国で最も多く満蒙開拓の人々を送り出した歴史的な背景がある。悲惨な体験をして引き揚げ、戦後にリンゴ栽培を始めた農家の後継者も含め18軒が生徒の思いをくみ、350キロのリンゴをトラックで学校に運んだ。

 伊那谷で積まれたリンゴは生徒らの応援メッセージを添えて700キロ離れた石巻市の仮設住宅や水産高校などへ届けられ、「りんごと花・絆プロジェクト」と名づけた活動は生徒会や地域、町を巻き込んだ被災地支援へと広がった。

 それ以降も生徒は被災地を毎年訪れ、リンゴや花を「笑顔」とともに贈り、東北の被災者がお礼にリンゴの摘果の手伝いに訪れる相互交流へと発展。心やさしき高校生はクッキーの包装に自分たちが考えたキャラクター「はまりん」を付けて親しみやすくした。

 「児童、教職員の多くが津波の犠牲となった石巻市立大川小学校では、命や日常を奪われた子供たちがどんなに無念だったかと言葉になりませんでした」「福島県南相馬市の帰還困難区域では立ち入り禁止のフェンスが張り巡らされ、汚染土の入った黒い袋が山積みに放置され、ソーラーパネルの光景とのアンバランスさが不気味でした」……。3年で部長の及川紅羽さんと生徒会長の田代直己さん、2年の太田和也さんは7年目の活動となる6月の東北視察について、厳しい現実を目の当たりにした心境も口にした。

 南アルプスと中央アルプスを東西に望み、天竜川の河岸段丘に恵まれた松川町ではやがてリンゴの収穫時期を迎える。「感謝されることで自分自身が成長した」「地域の方々との連携の大切さを知った」「被災地に関心を持つことの重要性を感じた」……。太平洋の荒波と向き合う被災地と交流してきた彼らの口調から揺るぎない信念が伝わった。【城島徹】

あわせて読みたい

この記事の特集・連載
すべて見る

注目の特集