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私の出発点

山田詠美さん『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』 「女流」の概念崩す

 オレの時より、少し声が小さかったようだぜ。小さな紙切れにはそう書かれていた。それを見た男たちは二度と彼女の部屋を訪れなかった。SHITと彼女は舌打ちをしながらも安らかな気持になり、悪くないわと呟いた。(『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』幻冬舎文庫より)

 長く読み継がれる普遍的な作品群をものし、押しも押されもせぬ存在だ。生々しい性愛、思春期の揺れる心、そして人が死ぬということ。どんな小説も甘いロマンとは無縁だ。時にカミソリのように切れ、時に冷笑的。それでも、清らかな倫理と品格に頬を張られたような思いになるのが山田文学である。

 20歳ごろから小説を書き始め、「ベッドタイムアイズ」で1985年に文芸賞を受賞。日本の米軍基地周辺で、しがない歌手の女が黒人の脱走兵をペットのごとく可愛がる姿を描いた。性描写だけでなく、黒人米兵と同棲(どうせい)していた私生活が注目されて世間の話題が沸騰。一方、評論家の江藤淳は「人生に対しても黒人兵に対してもほとんど零距離の近みにまで肉薄している」と激賞した。作家は幼少期に何度もいじめられた。文…

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