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荒川洋治・評 『ヒューマン・コメディ』=サローヤン著

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 (光文社古典新訳文庫・950円)

支えあう人びとの物語をつづる

 おとなも子どもも楽しむことができる。なに一つむずかしいところはないのに強い輝きを放つ。世界文学屈指の名編だ。

 アメリカの作家、ウィリアム・サローヤン(一九〇八-一九八一)はアルメニア系移民二世。三歳のとき父を亡くし、数年間は、兄姉とともに児童養護施設に。新聞の売り子や電報配達人を経て、創作の道へ。ユーモラスで独特の魅力をもつ作品は、世界の注目を浴びる。代表作『ヒューマン・コメディ』(一九四三)は、作家・小島信夫訳『人間喜劇』(研究社・一九五七、現在は晶文社)、関汀子訳『ヒューマン・コメディ』(ちくま文庫・一九九三)などで広く読まれた。今回は一層やわらかみのある新訳だ。

 カリフォルニア州イサカの、マコーリー家の人たちが、互いに支えあいながら、第二次大戦下の日々を過ごす。主人公ホーマーは、一四歳。父は、二年前に死亡。兄マーカスは、戦地に。母親と、子どもたちで家を守る。姉のベスは、ピアノを奏でる。みんな歌が好きだ。

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