メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

高田守先生の生き物語り

(番外編)赤とんぼはなぜ赤い?

秋になると体が赤く変化するノシメトンボ=高田守さん提供

 朝夕はめっきり涼しくなり、秋らしい陽気の日が増えた。秋と言えば、「夕やけ小やけの赤とんぼ」という童謡の歌詞でもおなじみの赤とんぼだが、「アカトンボ」という種類のトンボが存在しないことをご存じだろうか? 赤とんぼは秋に現れる体が赤いトンボの総称で、本州ではアキアカネやノシメトンボが代表的な種だ。

     日本人にはなじみの深い存在だが、意外なことに、赤とんぼがどうして赤い色になるのかは、長い間分かっていなかった。赤とんぼは初夏に羽化するが、夏の間は黄色で、赤くない。これが秋口になると、真っ赤な赤とんぼへと変身するのだ。寒い時期に赤みが強くなることから「色が濃くなることで体を温めているのでは」とか、成熟したオスだけが赤くなることから「メスにアピールしているのでは」といったことがいわれてきたが、決定的な証拠は示されてこなかった。

     そんな中、赤とんぼの色素について調べた日本の研究から、赤く見えるようになる仕組みが明らかになった。研究によると、赤とんぼには「オモクローム系色素」と呼ばれる色素が含まれていた。この色素は酸化という化学反応を起こすと黄色タイプに、酸化と反対の化学反応(還元)を起こすと赤色タイプに構造が変化する。赤とんぼの体が黄色から赤色に変わるのは、体内で還元という化学反応が起こり、赤色タイプの色素が増えるためだったのだ。

     では、なぜそんな化学反応が起こるのだろうか。その理由はまだはっきりとは分かっていないが、以下のように推測されている。赤とんぼは、秋になると日の当たる場所で長時間過ごす習性があり、紫外線によるダメージを受けやすい。これを防ぐために、還元を起こす抗酸化物質を体内に多量に生産するようになった結果、赤色タイプの色素が多くなったのではないか。これが真実なら、赤い色自体に意味はなく、体内環境が変化したことによって色が変わっただけということになる。

     ただし、実際はまったく逆である可能性も残されている。つまり、体が赤いこと自体に意味があり、それを実現するために色素を赤色タイプに変換する仕組みが進化したのではないか、という視点だ。こうしたさまざまな可能性について、今後も検証してみる必要があるだろう。

     このように、なじみの深い生き物たちの中にも新しい発見はたくさん埋もれている。当たり前と思わず、「なぜ?」と疑問を投げかけてみると、思いがけない大発見につながるかもしれない。(動物行動学者・高田守)=次回は10月31日掲載予定


     たかた・まもる 1984年千葉県生まれ。東京農工大農学部卒。英ケンブリッジ大行動生態学研究室留学を経て、東京農工大大学院連合農学研究科博士課程修了。京都大大学院農学研究科特定助教。専門は動物行動学、進化生物学。現在は生き物の家族や社会の研究に携わっている。趣味の「金魚すくい」は毎年全国大会上位の腕前。

    毎日新聞のアカウント

    話題の記事

    アクセスランキング

    毎時01分更新

    1. 福井・あわら市長 「キス相手」を告訴へ 恐喝未遂容疑で
    2. 東シナ海 中国軍機が日韓防空圏進入 韓国空軍、緊急発進
    3. フィギュア 羽生結弦が全日本選手権を欠場 連盟が発表
    4. 訃報 丸本義直さん55歳=進和常務
    5. リニア不正受注 大手ゼネコン一斉捜索へ 大林以外3社も

    編集部のオススメ記事

    のマークについて

    毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです

    [PR]