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持田叙子・評 『完本 春の城』=石牟礼道子・著

 (藤原書店・4968円)

「魂の故郷」天草、受苦の歴史

 春の潮のよい日。おかよは母のかたみの夕顔色の小袖をまとい、舟で嫁入りする。ここは天草、下島。めざすは対岸、島原半島の口之津村。全村が切支丹(きりしたん)である。その庄屋へ嫁ぐ。

 おかよの実家は仏教徒。しかし不安はない。亡き母も、マグダレナという霊名をもつ切支丹だった。舟が着くと、口之津村の子らが駆けよる。代表格の少女が進みでて、ようこそ村へアメン、と唱え、花嫁に野の花輪をささげる。

 うららかに優しく、物語ははじまる。石垣に天守閣に、桜ふぶき舞うごとき題名にふさわしい。しかし。

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