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堀江敏幸・評 『岩塩の女王』=諏訪哲史・著

 (新潮社・2268円)

 六年ぶりの作品集である。その間、作家は、小説の言葉がまったく出てこない、文学的な失語に陥っていたという。他者の言語に寄りかかる批評的な文章はべつとして、まっさらな紙に自分の言葉を置こうとすると、なにも生まれない危機的な状態。

 それは書き手にしかわからない壁である。当人の感覚にまちがいはない。しかし、ひとりの読者として言わせてもらうなら、諏訪哲史という小説家に甚大な空白があったとは感じられないのである。小説の規範と形式を崩して詩や音楽に近づき、幻想の最果てを目指していた前作『領土』の手応えは、いまも確かなものとして持続しているからだ。誰も見たことのない、架空の記憶に遡(さかのぼ)る世界への志向は、新作『岩塩の女王』においても消されてはいない。なにかちがいがあるとしたら、その世界がたどり着くべき場所から、出発すべき場所へと位相を移したことだろう。

 失語のなかから湧き出て来たのは、意味も脈絡もない、言葉以前の音の列である。冒頭の一篇、復活の契機となった「無声抄」の主人公は、作者と等身大の小説家で、四年に及ぶ失語を生きている。小説における彼の試みは、ノイズ音楽の目指すところと重なっていた。「無作為な偶然性と、美的な調和性との、およそありえぬ共存とも呼ぶべきもの」を、ほかならぬ言葉によるノイズ音楽として表現する矛盾をいかに克服するか。

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