メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

主要通貨入り1年、進まぬ国際化

 【北京・赤間清広】中国・人民元が昨年10月に国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)構成通貨に採用されてから1年が過ぎた。SDR採用を契機に「国際通貨」として人民元改革が進展すると期待されたが、中国当局は国境を越えた資金移動に厳しい規制を課すなど、国際的な信認は得られていないのが実情だ。

     「人民元改革は順調に進んでいる」。中国人民銀行(中央銀行)の盛松成参事は9月15日、人民元のSDR採用後の成果を強調した。しかし金融市場では、中国当局の政策について「国際化から逆行している」との批判が出ている。原因となっているのが、当局による人民元相場への過度な介入だ。

     中国経済の減速に伴い、海外への資金流出の動きが強まったことから、人民元は下落圧力にさらされた。このため当局は、人民元のSDR入り後も大規模な市場介入を繰り返し、元相場を下支えしてきた。

     海外への資金移動にも厳しい規制を課したため、中国企業による海外投資は激減。人民元取引の目安となる「基準値」の算出方法の見直しにも着手するなど、元相場の安定に苦心している。

     中国では、18日から5年に1度の中国共産党大会が開かれる。2期目に入る習近平指導部の威信を高めるためにも経済の不安定化は許されない。人民銀は改革をいったん棚上げしてでも、為替相場の安定を優先せざるを得ないのが実情だ。

     国際銀行間通信協会(SWIFT)によると、世界全体の決済に使われた人民元の割合は2015年8月に過去最高の2.79%まで高まり、円(2.76%)を逆転。ドル(44.82%)、ユーロ(27.20%)、ポンド(8.45%)に次ぐ世界4位の座を占めた。しかし直近は2%を割り込んで、円に再逆転を許しており、国際化はむしろ後退している。

     中国当局は、人民元の過度な変動を抑える一連の政策によって金融市場や経済情勢が安定し、人民元改革を加速する基礎ができたと強調する。しかし、値動きを市場にゆだねる「変動相場制」への移行は全く見えておらず、国際通貨としての信認を得るにはなお時間を要する見通しだ。

     中国の為替政策に詳しい野村資本市場研究所北京事務所の関根栄一首席代表は「中国当局も人民元改革の必要性は認識しているものの、当面は実体経済や国内の金融改革とのバランスを優先せざるを得ない。改革には一定の時間はかかる」と指摘している。

    安定した市場必要=国際通貨基金(IMF)金融資本市場局・トーマス・クルーガー副局長

     中国・人民元のSDR構成通貨入りは「人民元の国際化」が国際的に認知された点で、IMFと中国にとって節目になる出来事だった。長期にわたり途絶えていたSDR建ての債券が発行されるなど、SDRへの関心を喚起したことも重要な成功だ。世界の中央銀行などが保有する準備通貨としてのシェアは約1%だが、これはSDR入り決定前の想定通り。人民元の国際化や経済改革は長いプロセスだ。将来の経済改革がSDR入りの条件だったわけではないが、中国が改革を続けるという期待が背景にあったのは事実だ。

     中国経済は成長を続け、(中国が提唱する現代版シルクロード経済圏構想である)「一帯一路」を通じた海外経済との統合も進めているが、人民元が世界の基軸通貨になるには大きなハードルがある。貿易取引で広く使われるだけでなく、しっかりした制度や安定した金融市場などが必要で、現実味を帯びるのはかなり先のことだろう。ただ、中国が改革を続ければ、そうした方向に向かうことは確実だと思われる。【ワシントン清水憲司】

     【ことば】SDR

     Special Drawing Rights(特別引き出し権)の略で、国際通貨基金(IMF)加盟国が外貨不足に陥った際、外貨を引き出せる権利のこと。加盟国にはIMFへの出資比率に応じてSDRが割り当てられており、外貨が不足した時は配分されたSDRを他の加盟国に渡し、米ドルなどを融通してもらう。昨年10月に中国人民元が加わり、現在の構成通貨は米ドルと欧州のユーロ、日本円、英ポンドの計5通貨。構成通貨となるためには、貿易額が多い▽自由に取引できる--の二つの条件を満たす必要があるとされる。

    関連記事

    毎日新聞のアカウント

    話題の記事

    アクセスランキング

    毎時01分更新

    1. ORICON NEWS 伊藤詩織さん会見、手記に込めた思い「遠い誰かの話ではない」
    2. 外食チェーン 「串カツ田中」来月1日から食べ放題
    3. パソコン画家 エクセルで名画 群馬の77歳、初の個展も
    4. 特集ワイド 10・21 安倍首相、秋葉原演説会ルポ 政策より「敵たたき」に喝采
    5. 立憲民主 「無所属と連携」議論へ 希望に小池氏排除の声

    編集部のオススメ記事

    のマークについて

    毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです

    [PR]