ロシアとのビジネスに携わる企業・経済人を取材し始めて約8年になる。常々感じるのは、ビジネス分野に限らず、この隣国に関わる日本人の層が極めて薄いことだ。両国最大の関心事、北方領土問題も例外ではない。新聞紙面には特定の元島民、同じ学識者が繰り返し登場し、いつもの見出しが立つ。限られた関係者の間で堂々巡りを続けてきた領土問題だが、昨年後半、日本政府がからめ手から経済交流を打ち出したことで、空気が少し変わってきた。
政府は企業のロシア進出支援策を大幅に拡充し、さらに4島での「共同経済活動」を掲げた。後者は双方の主権を侵害しない制度をつくるという大胆なアイデアで、成否はまだ誰にもわからない。毎日新聞は9月8日朝刊で日露首脳が共同活動を5項目に絞ったと報じながらも「『特別な制度』進展なし」と、むしろ実現への疑念を強調した。これが世論であろう。
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