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ゲノム編集最前線/下 揺れる倫理 受精卵改変、規制が急務

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未来への影響は?
未来への影響は?

 強力な遺伝子改変技術であるゲノム編集の普及は、新たな倫理問題もはらんでいる。ヒトの受精卵にどこまで利用してよいのか。有害な生物種を絶滅させることは許されるのか。世代を超えた影響が著しいだけに、社会の合意や厳格な規制作りが急務だ。【千葉紀和、荒木涼子】

 ●難病患者に福音?

 「遺伝性の心臓病を引き起こす遺伝子異常の修復に成功した」。今年8月、英科学誌ネイチャーに載った論文が学界に波紋を広げた。米国の著名研究者シュークラト・ミタリポフ博士らの国際チームが、最新のゲノム編集技術クリスパー・キャス9をヒトの受精卵に使った研究だった。

 ヒトの体外受精卵の遺伝子をゲノム編集で改変した研究報告は欧米では初めて。中国で3例があるが、今回の論文が注目されたのは、150個を超す受精卵を作り出すなど強引な実験手法に加え、「修復の有効性が高く、懸念された目的外の変異も見つからなかった」と結論づけたからだ。後日、データの信頼性に疑義が出て「成果」は今も論争中だが、今後安全だと実証されれば、改変した受精卵を母胎に戻す臨床応用のハードルは技術的に…

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