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佐藤優・評 『「なんとかする」子どもの貧困』 湯浅誠・著

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 (角川新書・864円)

1ミリでも前に進めるために

 社会活動家で法政大学教授の湯浅誠氏が、現場で得た体験知とアカデミズムの学識を結合し、いまここにある貧困を現実的に解決することを狙った意欲的な作品だ。第1章は、貧困問題解決に向けた理論的考察、第2~4章は、子どもの貧困解決に取り組む人々についてのインタビューやルポルタージュから構成されている。自治体、企業、NPOなどさまざまな形態での活動が紹介されているが、その中には風俗店の経営者がこども食堂を運営するに至る経緯、アダルトビデオの動画配信で成功した経営者が始めたビジネススクールなど、これまであまり紹介されなかった試みについても記されている。子どもの貧困対策を1ミリでも前に進めようとする人は仲間だという湯浅氏の立場がこういう形で明確に示されている。

 湯浅氏の議論で興味深い点は、資本主義社会には格差があることを肯定した上で、衣食住を欠く絶対的貧困だけでなく、学校には通っているが修学旅行に行けないような相対的貧困の解決を訴えていることだ。<個人レベルでは、ある程度の格差は努力の源泉になる。「自分だって、やってやる」と。しかし、過度になると「あきらめ」「絶望」が生まれ始める。「どうせ無理」「やってもムダ」と。その怖さはみんなが知っている。だから繰…

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