歌の声と映像、そして衣装。ジャンルの違う三つのアートが一体となって不思議な世界を形づくる。まるで眠る海からあふれ出た少女の静かな、だが揺れ動く呼吸に耳をそばだてるような空間。ここではない、どこか。現在の不協和音に身を任せながら、新たな私の世界を模索する。新鋭歌人・野口あや子の写真歌集『眠れる海』(書肆侃侃房)が刊行された。「たしかな声や呼吸を覚えることは、たしかに歌い、暮らすことにつながる」と歌人はいう。
<なんてきれい 蓮(はちす) 半身を横たえるときは髪からたわみはじめて>。柔らかにたゆたう身体性への憧れ。かと思えば、<カットガラスてのひらにのせちりちりとここもわたしの来世だろうか>と、不安の声も聴く。野口は、岐阜市の高校在学中に短歌研究新人賞次席、翌年受賞。23歳のとき第1歌集『くびすじの欠片(かけら)』で現代歌人協会賞受賞、最年少記録をつくった。最近は朗読活動にも力を入れ、アートとしての歌…
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