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平松 洋子・評『おクジラさま ふたつの正義の物語』佐々木芽生・著

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捕鯨問題をブレークスルー 違いを認めて共に生きる道を探る

◆『おクジラさま ふたつの正義の物語』佐々木芽生・著((集英社/税別1700円)

 先ごろ上映スタートしたドキュメンタリー映画「おクジラさま ふたつの正義の物語」をさっそく観た。「日本の古式捕鯨発祥の地」、紀伊半島南端の和歌山県太地(たいじ)町。人口約三千人の漁師町で行われている小型のクジラやイルカ(成体約四メートル以下のクジラ)の追い込み漁をめぐる衝突を描く。ドラマさながらの人間模様、さまざまな価値観がぶつかり合う様子をカメラが追う。噛(か)み合わない主義主張を浮き彫りにし、安易な文化保護やナショナリズムを退ける風通しのよさ。捕鯨問題を通じ、いま私たちが直面するグローバリズムの課題を提示する出色の出来栄えだった。

 この映画の監督、佐々木芽生(めぐみ)が同題の本書の著者。映画の展開に沿う構成だが、太地町に関わり続けた歳月のなかで直面した捕鯨問題の意味を探り直す手つきがとても丁寧だ。長年ニューヨークに在住、報道の仕事に携わりながら鍛えたジャーナリストとしての視点が、本書にも通底している。

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