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大学関連

子どもの学力 10年追跡調査 知的好奇心育み学力アップ

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 全国統一小学生テスト(ナガセ傘下の四谷大塚が開催)が、今年で開始から11年目を迎える。大学受験を中心に展開する東進でも中学生テスト、高校生テストをスタートさせ、受験した子どもたちの学力について追跡調査をした。その結果、学力の伸びなどで興味深いデータが得られた。専門家の分析とともに紹介する。【中根正義】

本人の自覚を促すには

 全国統一小学生テストは2007年11月に始まった。「次世代を担う優秀な子どもの素質を埋もれないようにしたい」というナガセの永瀬昭幸社長が発案した。希望者を無料招待し、受験後に全国順位や都道府県別順位、偏差値などが記された個人成績表を配布している。

 「大都市圏だけでなく、学習塾などが少ない地方にいる子どもたちにも自分の成績がどのくらいなのかを知ってもらおうと、全国規模のテストを目指してきた」と永瀬社長は言う。その後、10年からは高校生、13年からは中学生をそれぞれ対象とするテストをスタートさせ、初等中等教育の全段階で学力を測れるようにした。

 昨年、全国統一テスト開始から10年が経過した。最初に受験した子どもたちが大学に進学するようになり、今回初めて、継続的にテストを受けてきた子どもたちが学力をどう維持、発展させているかを調べた。

 その結果、小学5年時に偏差値60以上70未満の子どもの65・7%、同じく偏差値70以上の子どもの91・9%は、高校3年時の偏差値が60以上をキープしていた(グラフ1)。また、小学校時代から継続的にテストを受け、今春、東大に現役合格した132人の小学5年時の偏差値帯を見ると、グラフ2の通り、小学校時代から偏差値が高い子どもが東大に進学していた。

 この結果からは、小学5年時の偏差値が大学受験に大きく影響するということが分かる。しかし、教育社会学が専門で千葉大名誉教授の明石要一・千葉敬愛短大学長は、小学5年時に偏差値50未満だった子どもの17・8%が高校3年時に偏差値60以上になっていることに注目する。さらに、東大合格者のうち、小学5年時の偏差値が50未満の子どもが9人いることにも関心を寄せるのだ。

 明石学長は「偏差値が伸びたプロセスや都市部と地方の子どもの差なども分析してほしい」としつつ、この子どもたちが偏差値を大きくアップさせたことについて、仮説として次の3点を提示した。(1)小学校時代に教師との人間的な出会いがなかった(2)教材が合っていなかった(3)出会った先生の教え方が悪かった--。その上で、小学5年以降で、いい教材、いい問いをする教師などに出会い、その中で子どもの知的好奇心が育まれ、学力をアップさせたのではないかと推測した。

 中学受験に詳しい森上教育研究所の森上展安代表は、小学校時代は子どもの成長にばらつきがあることを指摘する。その点を踏まえ、「基礎的な学力が養われていれば、伸びしろとして学力アップが期待できる。東大合格者の中には中学受験に失敗したといった挫折体験を持つ子どもたちもいる。この時期には本人の自覚を促すという点で、失敗体験や他者の存在を意識させるためにも多少は競争も必要ではないか」と話す。

 次に高校3年間での学校以外での学習時間について見てみよう(グラフ3)。ここからは、学習塾に通うことで学習時間が担保されていることが読み取れる。森上代表は「今の子どもたちは自宅では勉強せず、友人たちがいる気配を感じながら勉強するのを好んでいる。周りがいるからサボれないという環境が大切で、塾もそういうことを意識した教室作りをしている」と解説する。その上で、親には、子どもが中学生になったら、少しずつ大人扱いをしてあげて、子どもが自主的に学べるような環境作りをしてあげることの大切さを説く。

 永瀬社長は「社会がグローバル化、複雑化する中、未来を担う子どもたちには、自らの手で未来を切り開いてほしいと考えている。そのための物差しの一つとして、今後も全国統一テストを続けていきたい」と話している。

小学校中学年で基礎固め 偏差値に見る「苦手」 男子は国語、女子は算数

 全国統一テストを受けた小学生全学年の子どもと、高校3年生の国語、算数(数学)の平均偏差値が男女別でどう変化しているかについても、ナガセは調べている。その結果、小学1年時から高校3年時まで国語は女子が男子を上回り、算数(数学)は男子が女子を上回るという結果が出た。

 小中学生の男子に嫌いな教科を尋ねると、トップに挙げられるのはいずれも国語だ。一方、女子は小中学校とも算数(数学)がトップになるケースが多い。これは、各種調査で共通しており、今回の調査は、そうした結果を裏付けているといえよう。

 毎日新聞社の学校読書調査(2017年版)によれば、小学生高学年の1カ月間(5月)の本読書冊数は5年が男子9・9冊に対し、女子12・1冊、6年が男子7・7冊に対し女子9・8冊と、いずれも女子が男子を上回っている。さらに、さし絵に漫画などイラストを入れて読みやすく書かれたライトノベルについては、5年男子で「よく読む」と答えたのが15・2%に対して、女子は29・8%、6年は男子14・9%に対し、女子29・1%と男子と女子との間で大きな開きがあることが分かった。

 森上教育研究所の森上代表は、男女の成長の違いなども交え、こう説明する。

 「国語は文章の筋を追ったり、共感したりしながら読むことで能力がアップする。一般的に小中学校段階では男子は女子に比べ成長が遅く、そうした点からも、男子が国語に苦手意識を持ってしまうのではないか。国語は言葉をどれだけ知っているかが重要になる。読書量の多さが大きく影響している」

 一方、算数や数学に関しては、「女子校などで理系科目を女性教諭が教えている中高では、理系学部への大学進学者が多いという傾向がある。同性の教師が数学の面白さを伝えたり、学校の先輩などで理系関係で活躍する人が出てきたりすると、ロールモデルとしての憧れの気持ちが芽生えてくる。すると、『私もやれる』という気持ちになり、算数や数学を好きになる」と話す。また、算数・数学が好きな子どもは、ゲーム感覚で問題に取り組む傾向も強いようだ。

 ところで、小学校時代の教科教育に関し、千葉敬愛短大の明石学長は「学習のつまずきが小学校中学年から起こることが多い」と指摘する。この頃から国語は漢字が増え、算数は4ケタ以上の計算や分数などが出てくるからだ。学習の進度、レベルが大きくアップすることが、つまずきの要因になっているのだ。

 森上代表は「受験を考えると、小学4年あたりからの学力の伸びが重要になってくる。まずは、この頃に基礎的な学力を定着させていきたい。そのためにも、数学などは基礎をしっかりと学ばせることが大切だ。そこを固めないと応用ができるようにはならないので、注意が必要だ」と話している。

全国統一テスト

 四谷大塚が2007年11月、小学生向けに始めた。現在、全学年で算数と国語、小学4~6年は理科、社会も課す。毎年6月と11月に行い、今年6月は全国約2000会場で約14万3000人が受験。11月は3日に行われる。

 中学生向けは13年に始まり、年1回実施(今年は11月5日、来年からは年2回実施)、教科は英語、数学、国語。全国約1000会場で約3万人が受験する。

 高校生向けは10年から毎年1回実施(今年は10月29日、来年からは年2回実施)。全学年、センター試験に準拠し、全国約1000会場で約11万3000人が受験する。

 いずれのテストも無料。個人成績表を1~2週間で返却し、成績優秀者は東京都内で行われる決勝大会に招待(小学1年、小学2年は除く)。高校生テストは米国大学留学支援制度の選抜試験を兼ねる。10人を選び、ハーバード、プリンストン、エールの3大学に進学する生徒には4年総額28万ドルの奨学金を支給する。

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