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余録

毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

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江戸時代の旅行家、菅江真澄…

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 江戸時代の旅行家、菅江真澄(すがえますみ)が天明年間に秋田を旅していて暴風にあった時のことを書いている。「風が吹きおこり、家々をゆすぶるので、多くの家から起きだした人が、この風静まれと叫ぶ声が聞こえた」▲強風に向かって人々が大声をあげるこの習俗は「風追い」という。声の呪力(じゅりょく)で風が変わると考えたらしい。日本各地であげる声は異なり、「ホーイホーイ」「ホーッホーッ」といったものが多かった(常光徹(つねみつ・とおる)著「しぐさの民俗学」)▲衆院選の投票日をあすにひかえ、大声で追い払いたい太平洋上の台風21号である。だがその影響であすは北海道を除く各地は雨の見通しという。ここは声に頼るより、天気予報を見ながら期日前投票をした方がいい地域もありそうだ▲それにしても各党リーダーの声の呪力で風の向きや強さがめまぐるしく変わった選挙戦である。そもそもの始まりは加計(かけ)・森友問題での政権への逆風を「国難突破」のかけ声で一挙に反転させようと踏み切った首相の衆院解散だった▲これに対しすかさず「リセット」の一声で野党第1党をのみ込む旋風を起こした小池百合子(こいけ・ゆりこ)氏の新党である。だがその「排除」の声でまたも風向きは一変、枝野幸男(えだの・ゆきお)氏の新党への追い風でリベラル第三極も存在感を示すに至っている▲人々を振り回した声の交錯と風の変転で、その行方を占う情勢分析の声もにぎやかである。だがいうまでもなかろう。この国を動かす風の強さや向きを決めるのは有権者のひそやかな声のこもった1票だ。

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