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鑑賞の達人がお薦めする注目公演を、聴きどころとともに紹介します。

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在京オーケストラの新たな取り組み

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写真提供=NHK交響楽団
写真提供=NHK交響楽団

 最近は、オーケストラが通常の演奏会だけでなく、クラシック音楽やコンサートホールの枠にとらわれない企画で、より多くの聴衆にアピールしようとしている。そのいくつかの動きを紹介したい。(音楽評論家・山田治生)

 NHK交響楽団は来年3月4、6日にオーチャードホールで、首席指揮者パーヴォ・ヤルヴィとともに、バーンスタインの生誕100周年を記念して「ウエスト・サイド・ストーリー」全曲を演奏する。演奏会形式ではあるが、歌手に、ジュリア・ブロック、シャイアン・ジャクソン、アマンダ・ボトムス、ケヴィン・ヴォートマン、ケリー・マークグラフら、アメリカのオペラハウスやブロードウェーで活躍している精鋭が招かれる本格上演。パーヴォ・ヤルヴィがバーンスタインから薫陶を受けたにしても、ドイツ系の名指揮者たちによって鍛えられた伝統がありドイツ音楽を得意とするN響が、ブロードウェーミュージカルを全曲演奏するのは画期的なことだといえるだろう。優秀な若手奏者が次々と加わっている今のN響のハイレベルな演奏が楽しみである。パーヴォ・ヤルヴィとN響は9月に「ドン・ジョヴァンニ」の演奏会形式での上演を成功させている。「ウエスト・サイド・ストーリー」もその延長線上にあるに違いない。

 また、N響は10月29日に本拠地NHKホールのすぐ近くの代々木公園中央広場特設ステージに登場し、代々木公園開演50周年・NHK音楽祭第15回記念「N響ピクニックコンサート2017」を開催する。これは東京2020公認プログラムでもある。N響正指揮者の尾高忠明が指揮を執り、「ヴァルキューレ(ワルキューレ)の騎行」、行進曲「威風堂々」第1番などの名曲のほか、「パイレーツ・オブ・カリビアン」などの映画音楽も演奏する。ゲストとして西川貴教が出演。ステージ前着席エリアは入場整理券が必要だが、それ以外の場所は事前申し込み不要で、自由に聴くことができる。休日の午後、ふらっと寄ってみるのも楽しい。

 その前日の10月28日、代々木公園中央広場特設ステージでは「子どものためのコンサート オーケストラ大運動会!」が開催される。これも代々木公園開演50周年とNHK音楽祭15回を記念するイベント。こちらには、東京フィルが出演する。岩村力が指揮を執り、中川翔子によるアニメソングコーナーもある。このコンサートもステージ前着席エリア以外は、入場無料・観覧自由である。

 すみだトリフォニーホールで昨年から始まった「新日本フィルの生オケ・シネマ」もオーケストラとホールの新しい試みである。チャップリンの無声映画の伴奏音楽を生のオーケストラが演奏するというもの。2016年は「モダン・タイムス」、今年は「街の灯」が上映&演奏された。指揮は無声映画伴奏のスペシャリスト、ティモシー・ブロック。今年5月に「街の灯」を見たが、満員の盛況。映画館のような観客の一体感とコンサートのライブ感が一度に楽しめた。ある意味、オペラとコンサートの中間にあるものといえるかもしれない。来年は、5月に「黄金狂時代」の上映&演奏が予定されている。

2016年2月「とっておきアフタヌーン」より=写真提供:サントリーホール
2016年2月「とっておきアフタヌーン」より=写真提供:サントリーホール

 日本フィルとサントリーホールは、2015年から、平日午後の「とっておきアフタヌーン」に取り組んでいる。これはオーケストラと他ジャンル(ミュージカル、歌舞伎、バレエ)とのコラボレーションの試み。これまで6回のコンサートがあったが、特に歌舞伎の回に、山田和樹の指揮で、尾上右近が「春の祭典」や「ローマの松」を舞ったのが印象に残っている。バレエジェンツも楽しいステージを繰り広げた。今年度はサントリーホールが改修の影響で開催されなかったが、2018年度は、5月、9月、2019年2月に予定されている。新たに企画が練り直されているという。

カンブルラン=写真提供:読売日本交響楽団
カンブルラン=写真提供:読売日本交響楽団

 読売日本交響楽団は、この秋、新国立劇場のピットに初めて入って「神々の黄昏」を演奏するなど、オペラづいている。注目は、11月のメシアンの「聖アッシジのフランチェスコ」の日本初演。20世紀を代表する作曲家、オリヴィエ・メシアンの晩年のオペラ。上演時間が休憩を入れて6時間ほどかかる大作である。しかし、この現代作曲家の超大作の2公演はあっという間にチケットが売り切れた。これはコアな現代音楽ファンだけが買ったとは思えない。常任指揮者シルヴァン・カンブルランがメシアンの他の作品を継続的に定期演奏会などで紹介してきた成果ともいえよう。現代音楽を現代音楽ファンだけに聴かせるのではなく、普通のオーケストラファンにも関心を持たせることに成功した好例である。東京の2公演は完売だが、11月23日にはびわ湖ホールでの公演がある。

公演データ

【N響ピクニックコンサート2017~東京2020公認プログラム】

10月29日(日)14:30 代々木公園中央広場 特設ステージ

指揮:尾高 忠明

ゲスト:西川 隆教

ナビゲーター:松岡 修造

管弦楽:NHK交響楽団

 

ワーグナー:「ヴァルキューレ(ワルキューレ)の騎行」

エルガー:行進曲「威風堂々」第1番

映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」から ほか

 

【パーヴォ・ヤルヴィ&N響 ウエスト・サイド・ストーリー~レナード・バーンスタイン生誕100年記念】

2018年3月4日(日)15:00 6日(火)15:00 オーチャードホール

バーンスタイン:「ウエスト・サイド・ストーリー」(コンプリート・ブロードウェイ・スコア版 演奏会形式 英語上演日本語字幕付き)

指揮:パーヴォ・ヤルヴィ

マリア:ジュリア・ブロック

トニー:シャイアン・ジャクソン

アニタ:アマンダ・ボトムス

リフ:ケヴィン・ヴォートマン

ベルナルド:ケリー・マークグラフ ほか

 

【シルヴァン・カンブルラン指揮 読売日本交響楽団 メシアン:歌劇「アッシジの聖フランチェスコ」】

11月19日(日)14:00/26日(日)14:00 サントリーホール

23日(木・祝)13:00 びわ湖ホール

指揮:シルヴァン・カンブルラン

天使:エメーケ・バラート(ソプラノ)

聖フランチェスコ:ヴァンサン・ル・テクシエ(バリトン)

重い皮膚病を患う人:ペーター・ブロンダー(テノール)

兄弟レオーネ:フィリップ・スライ(バリトン)

兄弟マッセオ:エド・ライオン(テノール)

兄弟エリア:ジャン=ノエル・ブリアン(テノール)

兄弟ベルナルド:妻屋 秀和(バス)

兄弟シルヴェストロ:ジョン・ハオ(バス)

兄弟ルフィーノ畠山 茂(バス)

合唱=新国立劇場合唱団、びわ湖ホール声楽アンサンブル

合唱指揮:冨平 恭平

管弦楽:読売日本交響楽団

 

メシアン:歌劇「アッシジの聖フランチェスコ」(演奏会形式/原語上演/全曲日本初演)

筆者プロフィル

 山田 治生(やまだ はるお) 音楽評論家。1964年、京都市生まれ。87年、慶応義塾大学経済学部卒業。90年から音楽に関する執筆を行っている。著書に、小澤征爾の評伝である「音楽の旅人」「トスカニーニ」「いまどきのクラシック音楽の愉しみ方」、編著書に「オペラガイド130選」「戦後のオペラ」「バロック・オペラ」などがある。

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