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三浦 天紗子・評『大学病院の奈落』高梨ゆき子・著

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医学界の体質が招いた無責任すぎる医療事故

◆『大学病院の奈落』高梨ゆき子・著(講談社/税別1600円)

 技術も経験も足りない医師が難しい手術を次々と行い、多くの患者の死期を早めた。そんな悲劇が現実に起きていたと周知されたのは、2014年11月に『読売新聞』が報じた〈腹腔(ふくくう)鏡手術後8人死亡〉というスクープ記事からだった。本書は、その群馬大学病院(以下、群大)の大スキャンダルを追った記者が、一連の事故の経緯とその背景、発覚後の対応までを詳細にまとめた迫真のノンフィクションだ。

 群大では、ただでさえ人材不足の外科が第一と第二のふたつの派閥に分かれ、コミュニケーションさえほとんどなかった。第二外科のトップ教授は開腹手術の経験も乏しい未熟なリーダーで、「助教」というペーペーの部下を頼みに、腹腔鏡手術など高度な手術件数を増やすよう推進していた。結果的に30人もの患者を手術死させてしまった執刀医は、難しい手術を学べる上級の医師もいない環境で、エースとして異常な数の手術をこなさな…

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