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幸せの学び

<その180> 味ハ人ナリ=城島徹

新刊を手にする団田芳子さん

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 「食いだおれの街」大阪で健筆をふるうグルメライターの団田芳子さんが自身の行きつけ50軒を紹介した新刊「私がホレた旨し店 大阪」を出した。「みんな味のあるオモロイ職人や」。愛情込めて味の達人50人を“料理”した筆がさえわたる。

     この新刊、ふつうのグルメ本とはまったく違う。素材の良さや調理の腕を雄弁に物語るカラー写真が一枚もないのだ。「店の一番の魅力はなんやろ。やっぱり料理人さんの魅力や」。そう考えた筆者は腹をくくり、味を生み出す「人物」に焦点を当てることにした。

     そのなかに、余命わずかなワイン収集家とフレンチシェフの話がある。昨年末、自宅へのケータリングを頼まれた料理人は繁忙期にもかかわらず駆けつけ、感激した収集家から手を握られた。この収集家から若き日にワインを教わった団田さんは「最期まで、人にご馳走(ちそう)とワインを振る舞って、コレクター先生は、虹の向こうに旅立たれた」とつづった。

     「料理ハ人ナリ」と題し出版に合わせて大阪市内で行われたトークセッションには、本に登場する料理人たちが姿を見せた。「法善寺真ん前の河内鴨料理店のカミムラ君が来ています。彼はほんまに無謀な変人で……」。団田さんからいじられ気味に紹介された若大将は「はい、私は219ページに出ています」と笑顔で立ち上がった。

     そんな光景から、料理人との「つながりの深さ」が伝わった。笑いが起こる会場で、著者は「この本に登場する50人のほとんどは商売下手で、お客さんから『おいしい』と言ってほしい人なんです。よろしくお願いしますね」と語りかけた。

     バブル真っ盛りの1980年代末、情報誌の編集部でライター稼業を始めた団田さんに出会った私は「これだけ書けるなら、フリーになっても大丈夫」と言ったらしい。覚えていなかったが、後に「それで私はフリーになる決心してんで」と言われ、冷や汗が出た。

     というのも独立2年後にバブル崩壊で原稿の注文が激減し、PR誌や情報誌で食いつないだという。夜の繁華街では成り金のオジサンや若いオトコたちが周囲に漂流していたに違いないが、鼻にかかった甘い声で巧みに転がして危ない一線は超えさせなかったのだろう。あたたかな文章の力で関西を代表するフードライターとして今の地位を築いたのだ。

     「ひょうきん、無邪気、能天気、律義、わがまま、実直、控えめ、お人よし……。人となり、生い立ち、考え方が料理を作る。分かったのはこれだけね」。不良の雰囲気を残しつつ姐御(あねご)の貫禄も身に着けた著者の横顔を見やり、感慨深く杯を傾けた。【城島徹】

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