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松尾貴史のちょっと違和感

衆院選「希望」惨敗 「鉄の天井」とうそぶける神経

=松尾貴史さん作

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 衆院選が終わり、一瞬「希望の党」に風が吹いたかと思えば、235人の候補者を立てたにもかかわらず、選挙期間中の小池百合子代表の言動や周辺の出来事などもあって失速し、結果は比例も含めて50議席という結果になった。

 結果がわかる頃合いには、小池氏は東京都知事としての仕事だとかでパリにいて、生中継で感想を求められ、珍しく殊勝に語り謝罪したかのようにも思えた。

 しかしその後、キャロライン・ケネディ前アメリカ駐日大使との対談で、「ガラスの天井を打ち破ったと思ったら鉄の天井があることを知った」と、まるで日本の社会は女性の社会進出に対する抵抗が大きく、それが彼女の目標達成を阻んでいるかのような感想を語っていたことにいささか驚いた。

 もちろんさまざまな要素はあるだろうけれども、今回の選挙での敗因の主なところは、彼女の言動に起因するものだった。それを海外に向けて、「日本は女性差別の国」とアピールして、何か得があるのだろうか。自己実現でつまずいたという失敗を、それを責めているわけでもない人たちに向けて誤誘導するような日本の貶(おとし)め方は、気持ちがよろしくない。

 ガラスの天井を打ち破ったというけれど、それは都知事になったということなのだろうか。それとも、都民ファーストを設立して都議会で最大会派にしたということだろうか。すると、鉄の天井は何を意味するのか。政権党の党首になるということか、それとも総理大臣になるということか。後者ならば、衆院選に立候補しないという選択をした自身が招いた結果で、鉄の天井でも鉄火丼でも天丼でも何でもない。

 自身の秘密主義や独断専行、資金調達の手法、そして「排除の論理」に、有権者が不快感を覚えたというところが実際ではないか。あれだけ旋風を巻き起こした東京ですら、選挙区はほぼ壊滅だった。中でも、側近中の側近で都知事になる前からずっと行動を共にしてきたかに見えた候補者すら落選の憂き目にあっている。彼も女性差別で落とされたとでもいうのか。

 これは、敗北した党のトップを責める意味合いではなく、この国がまだまともになれる千載一遇の機会であったにもかかわらず、そのオペレーションのまずさでそれをぶち壊したことについて、「鉄の天井」などとうそぶける神経に強い違和を感じたから、「おぼしきこと言わぬは」的に吐露しているのである。責めているけど。

 そこにうかうかと乗った、以前の最大野党・民進党の前原誠司代表も情けないの一言に尽きる。方向性を決めてから辞任する意を漏らしているが、この期に及んで、なぜ方向性を自分が決めるような口ぶりでいられるのだろう。そして、元は税金なのだから、民進党で保持していた政党交付金を、いくら、どう使って、これからどう配分するのかはっきりさせてから、今後の方向などに余計な関与をせずに辞めるべきではないか。それをしなければ、これまで党が訴えてきたことに大きく矛盾するだろう。

 そして、「希望」の美辞を選挙の肩書にしたくて、「改憲」やら「戦争法」にたてつきませんと念書に署名をさせられてでも群がりすがった、そもそも民進党の候補者たちの浮足だった迷走も情けなく、滑稽(こっけい)ですらあった。何が彼らにこれほど含羞のない振る舞いを演じさせるのだろうか。希望の候補者なのに、選挙カーから何から立憲民主党のイメージカラーの紺色で走り回っていた候補者も痛々しかった。

 自民党の幹部が「小池と前原に足を向けて寝られない」などと軽口をたたいたという話を聞いたが、野党共闘が継続していれば、もちろん与党は大きく議席を減らしていただろうからまさに本音だろう。野党の側にも「純化して立憲民主が育ったから前原は功労者だ」と評価する人までいるようだが、これは「火災保険がおりたから」と言って火事が起きたことを評価するような話ではないか。(放送タレント、イラストも)

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