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社説

朴裕河教授に逆転有罪 学問の自由を侵す判断だ

 慰安婦問題を扱った著書「帝国の慰安婦」で名誉毀損(きそん)の罪に問われた韓国・世(セ)宗(ジョン)大の朴裕河(パクユハ)教授に、ソウル高裁が逆転有罪判決を下した。

     大きな影響力を持つ支援団体に後押しされた元慰安婦らの告訴を受けて、検察が2年前に在宅起訴した。今年1月の1審判決は「意見の表明にすぎない」などとして無罪だった。

     控訴審判決は一転して、名誉毀損の意図を認定した。根拠とされたのは、不正確な引用を含んでいると指摘される1996年の国連報告書(クマラスワミ報告)などだ。

     名誉毀損の適用基準が国によって違うことは理解できる。

     しかし、朴教授の著作は植民地の女性を戦場に動員した「帝国」というシステムに着目した学術研究だ。

     朴教授は「多くの少女が日本軍に強制連行された」という画一的イメージを否定した。一方で、慰安婦を必要とした帝国主義日本に厳しい視線を向けている。実際には業者が慰安所を運営していたとしても、そのことで日本が免罪されるわけではないと明快に主張した。

     日韓のナショナリズムが衝突する状況から脱し、和解へ進む道を模索する意欲が読み取れる。それを否定するのは学問の自由を侵す判断ではないか。極めて残念である。

     日本の植民地支配に起因する問題に対して、否定的な見方が韓国社会に多いことは不思議ではない。

     だが、感情論や政治性を排した歴史研究は不幸な過去を繰り返さないために重要だ。世論の反発が強い分野でこそ、学問や表現の自由は守られなければならない。

     慰安婦問題は外交的にも敏感な懸案だ。特に朴槿恵(パククネ)前政権の前半期には日韓関係全体を悪化させた。一昨年末の日韓合意でやっと状況が変わり、両国の安全保障に緊要な対北朝鮮政策での連携もスムーズに進むようになった。

     それでも韓国には合意への反対論が根強い。文在寅(ムンジェイン)大統領は合意見直しを選挙公約としていた。当選後は「見直し」を口にしなくなったものの、日本側には文政権の進める合意の検証への警戒感が強い。

     今回の判決は韓国内の合意否定論を勢いづけかねない。文政権には、日韓の感情的対立を再燃させないよう留意してほしい。

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