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田中優子の江戸から見ると

法政大総長・田中優子さんのコラム。江戸から見る「東京」を、ものや人、風景から語ります。

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春の城

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 「石牟礼道子と出逢(であ)う」という催し物で話をした。島原天草一揆(1637~38年)を題材にした「春の城」が単行本化され、そこに解説を書いたご縁である。

 島原天草一揆は、江戸時代の大きな転換点となった。キリシタンの反乱のように語られるのは、幕府側の見方である。実は藩の極端に過重な年貢、拷問、処刑などが原因の百姓一揆だったのだ。

 差別と苦しみの中で、信仰を捨てた人々も再び戻る現象が起きた。それを「立ち返り」という。そこに天草四郎が出現する。「春の城」では、四郎を「もだえ神」として描いている。もだえ神とは、苦しむ人々に力を貸し、力になれない時は、もだえながらその苦しみを共有する魂を持った者のことだ。石牟礼道子はこの魂をとりわけ大切なものと考えている。四郎はキリストの「やつし(別の姿をとること)」に見える。キリストとは、もだ…

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