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揺さぶり虐待

認定に科学的根拠を 弁護士ら冤罪防げ

「乳幼児揺さぶられ症候群(SBS)」を検証するサイト

 乳幼児を激しく揺さぶって頭部にけがをさせる「乳幼児揺さぶられ症候群(SBS)」で保護者が逮捕される事件が後を絶たない。ただ、家庭内のため事実認定が難しく、公判で無罪を主張するケースも多い。大学教授や弁護士らは「症状と揺さぶりをつなげるには科学的に十分な根拠がなく、冤罪(えんざい)を生む可能性がある」として、虐待が疑われた被告らを支援するプロジェクトを始めた。

 甲南大法学部の笹倉香奈教授と大阪弁護士会の秋田真志弁護士が中心となり、10月25日にホームページ(http://shakenbaby-review.com/)を開設した。「SBS検証プロジェクト」の名称で、全国の弁護士や大学教授ら約20人が参加して勉強会を開いたり、弁護活動をしたりしている。

 SBSは、(1)脳と頭蓋骨(ずがいこつ)をつなぐ静脈が揺さぶりで切れ、脳内に血がたまる硬膜下(こうまくか)血腫(2)網膜出血(3)脳に水がたまる脳浮腫--の3症状が特徴とされる。

 笹倉教授によると、1971年に英国の小児神経外科医が「揺さぶりで乳幼児の硬膜下血腫が生じる可能性がある」と仮説を発表したのが始まり。80~90年代の欧米で「三つの症状があり、乳幼児の体に目立つ虐待の痕がなければ、揺さぶられたと推定できる」との考えが医師らの間で定着し、2000年以降、他国にも広がった。日本の医師の間でも三つの症状があれば揺さぶりがあったとの認識が定着し、公判で医師が証言することが多い。

 一方で、「低い位置から転落した場合でも同じ症状が出る」などと異論を唱える研究者も出始めた。スウェーデンの最高裁は14年、「三つの特徴から揺さぶりがあったとする科学的根拠は弱い」として子供への暴行が問われた父親に逆転無罪を言い渡した。米国や英国などでも有罪とされた事件を研究者らが再検証し、再審無罪となる事例が出ている。

 日本では、SBSの疑いで保護者が逮捕された事件は、毎日新聞の集計で13年以降に少なくとも約40件あり、約8割が「子供がベッドから落ちた」、「暴力をふるったことはない」などと容疑を否認。多くは公判で有罪とされているが、不起訴や無罪となったケースもある。

 広島地裁では14年、広島県呉市で生後5カ月の長男を揺さぶりけがをさせたとして傷害罪に問われた父親の無罪が確定した。公判では、担当医が事件以前から硬膜下血腫が生じていた可能性を指摘。判決は「激しい揺さぶりがなくても傷害が生じた可能性がある」と判断した。

 赤ちゃんを激しく揺さぶる行為は厳禁だが、秋田弁護士は「日本の裁判では、症状があれば虐待が真実であるかのように受け止められている」と指摘。笹倉教授も「児童虐待は断じて許されないが、誤って有罪とすることがあってはならない」と話す。来年2月に海外の医師や法律家を招き、京都で国際シンポジウムを開く。【遠藤浩二】

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