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社説

北朝鮮めぐる日米首脳会談 試される非核化の構想力

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 安倍晋三首相と初来日したトランプ米大統領が迎賓館で会談し、北朝鮮の核・ミサイル問題や日米経済問題などを協議した。

 北朝鮮問題で両首脳は「北朝鮮の政策を変更させるため圧力を最大限まで高めていく」ことで一致した。

 経済では「貿易投資を活性化し、エネルギーやインフラなどで協力を強化していく」ことを確認した。

 両首脳の会談はこの9カ月半で5回目だ。電話協議は16回に及ぶ。日米首脳がこれほど緊密に連携した例はかつてない。

 安倍首相が共同記者会見で「首脳同士がここまで濃密に深い絆で結ばれた1年はなかった」と振り返ると、トランプ氏も同意した。

 幅広い課題を率直に議論できる日米関係の現状は評価されよう。

リスクの説明が必要だ

 今回の会談の最大の焦点は、核兵器や大陸間弾道ミサイル(ICBM)技術を向上させる北朝鮮に日米がどう対応するかだった。

 日米の共通の戦略は、「最大限の圧力」を加えることで、北朝鮮が態度を変え、対話に応じて非核化に動き出すようにさせることだ。

 両首脳は会談で「北朝鮮に対し今後の取るべき方策について見解が一致した」という。

 首相は独自に新たな対北朝鮮制裁を決定する意向を明らかにし、トランプ氏は北朝鮮のテロ支援国家再指定をめぐる検討状況を説明した。

 米国が国際社会とともに経済的・外交的圧力をかけ、これを日本が支持することは当然だろう。

 だが、圧力の先にどんな解決策を描いているのか示されただろうか。

 むしろ懸念されるのは、北朝鮮の軍事的活動に対抗して米国も軍事的圧力を強め、米朝間の緊張が高まっていることだ。

 米国防総省は北朝鮮のすべての核施設を制圧するには地上部隊による侵攻しかないという軍事的な想定を議会側に伝えている。

 その場合、北朝鮮からの生物兵器や化学兵器を含めた反撃の可能性もあるという。軍事衝突は絶対に避けなければならない。

 首相は記者会見で「だれも紛争を望んでいない」と言うだけで、互いに自制して不測の事態を避ける方策について明確な説明はなかった。

 だが、衆院選で北朝鮮問題を「国難」と言い切り、国民の危機意識を喚起し、争点化しようとしたのは首相である。

 もし、朝鮮半島有事を想定した議論が日米両政府間でされているのなら、どの程度のリスクがあるのか、国民に説明すべきだろう。

 北朝鮮が対話に応じたとしても、非核化への道程は明らかではない。どういう手順で非核化を実現するのか。戦略的で長期的なロードマップを構想する必要もあろう。

 トランプ氏は北朝鮮による拉致被害者の家族とも面会したが、拉致問題の解決の道筋も明確ではない。

同盟は地域安定の土台

 首脳会談では「中国がさらに大きな役割を果たすことが重要」という認識でも一致した。北朝鮮問題で中国の協力は不可欠だ。

 一方で、日米とオーストラリア、インドの4カ国の連携を基軸に太平洋からアフリカまで幅広い範囲で安定と成長を目指す「インド太平洋戦略」の重要性も確認した。

 日本が米側に示したとされる構想だが、これはシルクロード経済圏構想「一帯一路」を掲げる中国をけん制する狙いがある。

 東シナ海や南シナ海での中国の軍事的な海洋進出は看過できない。だが、日本が対中抑止を主導し必要以上に中国を刺激することには慎重であるべきだ。中国が日本への反発を強めるだけだろう。

 せめぎ合いは日米間にもある。トランプ氏は「日本に対する貿易赤字を減らしていかないといけない」と述べた。米側は、日本が警戒する2国間の自由貿易協定(FTA)に意欲を示している。

 しかし、首相はこうした摩擦を表に出さず、米国製の防衛装備品を売り込むトランプ氏に「質的にも量的にも拡充していきたい」と応じ、対北朝鮮の連携を演出した。

 そもそも日米同盟は2国関係の強化にとどまらず、アジア太平洋の秩序を維持し、この地域に自由と繁栄をもたらすことに存在意義がある。

 日米関係と日中関係などとのバランスを取りながら、どう「危機」を克服していくかが、安倍外交に問われている。

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