サントリーの創業者、鳥井信治郎を描いた伊集院静さん(67)の小説『琥珀(こはく)の夢』上・下巻(集英社)が刊行された。伊集院さんが初めて経済人を主人公に、その情熱、信条を通して「日本人とは何か」に迫っている。信治郎の生きる姿には、作家自身もまた逆照射されてくる。
原稿が上がるのが夜中の2時を過ぎることがある。腹が減っている。東京の定宿付近で開いているのはまずいすし屋だけ。カウンターの隅に座り、ふと思う。「なんで俺は、こんなところで1人でまずいすしをつまんでいるんだろう。いや、どうしてこういう人生になってしまったんだろう」
師と仰ぐ色川武大さんとギャンブルざんまいの日々を送っていた頃、同じような姿を見たことがある。「私には確信がある。あの時、先生は『どうしてこうなったんだろうか』に近いことを考えていたんじゃないか」。作家になったのに高尚な理由はないのだという。
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