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<その182> ブックインとっとり=城島徹

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授賞式で笑顔を見せる橋本道範さん(左)とサンライズ出版の岩根治美・専務取締役 拡大
授賞式で笑顔を見せる橋本道範さん(左)とサンライズ出版の岩根治美・専務取締役

 地方での出版活動を奨励しようと全国の優秀作品を顕彰する「ブックインとっとり」が30回の節目を迎えた。この草の根活動を参考に韓国でも同様の取り組みがスタートし、鳥取市で先月開かれた記念式典では受賞者の喜びにあふれる講演や日韓両国の地方出版関係者の活発な意見交換が行われた。

 ブックインとっとりは1987年から有志で実行委員会を作り、鳥取県と東京23区を除く全国各地の出版社の新刊本を県内で展示し、来場者の投票、図書館関係者らによる審査で地方出版文化功労賞、奨励賞、特別賞を贈り、地方出版社に大きな励みとなっている。

 今回は地方出版文化功労賞奨励賞に、滋賀県立琵琶湖博物館専門学芸員の橋本道範さん編著「再考ふなずしの歴史」(サンライズ出版)が選ばれた。滋賀県特産のふなずしに関する論考を幅広い専門家から集め、地域で独自に発展してきたことを論証した。

 また、特別賞に須知徳平さんがアイヌ伝統文化の復活・復権に貢献した人物を小説という形で描いた評伝「北の詩と人-アイヌ人女性・知里幸恵の生涯」(岩手日報社)、世界文化遺産に登録されている端島(通称・軍艦島)に生まれ育ち、働いた加地英夫さんの半生記「私の軍艦島記」(長崎文献社)が選ばれた。

 授賞式では、橋本さんが記念講演し、「地域博物館の使命は地域づくりを応援すること」と説明。江戸時代以前の「古ふなずし」の復元や、県民参加型調査「私のふなずしこだわり自慢」の実現に意欲を示し、「味が多彩なふなずしの多様性を解明するなど、受賞を機に博物館の研究成果を世界に発信していきたい」と語った。

 「ブックインとっとり」は国境を超えて広がろうとしている。韓国の地方出版関係者が注目し、2015年秋に鳥取へ視察に訪れた。ソウルへの一極集中の傾向が強い出版物の流れを変えようと、「ブックイン」をヒントに今年5月には済州島で初めての「韓国地域図書展」が開かれ、韓国地域出版大賞を制定し、初めての受賞者を選んだという。

 記念式典ではその模様が報告され、「韓国の地方出版の現状と未来」と題する韓国出版学会会長の講演があり、続くパネルディスカッション「地方出版とブックインのこれから」で日韓双方の関係者が意見交換した。

 行政と一体化して推進する韓国の取り組みを聞いた日本のパネリストから「言論と出版の自由のため行政からの助成を一切受けず、やせる思いで続けてきた」と語るなど、有意義な討論となり、「若い世代も取り込み長く続けよう」という声が聞かれた。【城島徹】

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