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富士登山、頭は守れるか

夏の富士山を駆け上がる今年の「富士登山競走」では、試験的にヘルメットの貸し出しが行われた=山梨県富士吉田市役所前で7月28日、小田切敏雄撮影

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 全国的な登山ブームに伴い、登山者の遭難も相次いでいる。技量だけでなく、装備品不足が原因とみられるケースも少なくない。特に頭部を守るヘルメットは、2014年の御嶽山(おんたけさん)(長野・岐阜県境)噴火以降、重要性が改めて認識された。富士山でも同様で、山梨県富士吉田市では今夏から貸し出しを始めたが、着用者は少なく、自治体はあの手この手で普及を図っている。

 ●御嶽山噴火の教訓

 「ヘルメットの貸し出しを行っております」。今夏、富士山の山梨県側6合目では、ふもとに位置する富士吉田市職員らが登山者に声を掛ける光景が見られた。あちこちに日本語と英語で着用を呼び掛けるポスターも張り出した。ヘルメットは噴石や転倒から頭部を守ってくれる重要アイテムだが、登山者の反応は芳しくなく、「いやいや」と断る人も少なくなかった。職員は「夏場で暑いからか、ファッション性がないからか、他にかぶっている人が少ないからか……。危険性を理解していないことだけは確かだ」と肩を落とす。

 登山ルートの起点となる富士吉田市では、富士山だけで年間約22万人(夏山シーズンの7月1日~9月10日)の登山者を抱える。噴火に備え、ヘルメットは山小屋にも常備されているが、重大事故を防ぐため、登り始めから着用してもらおうと、市は今年の夏山シーズンに合わせ、6合目で貸し出しを始めた。

 ●山梨側200個用意

 ヘルメットは市と協定を結んでいるアウトドア用品大手「モンベル」が100個を無償提供。富士山の山梨県側の「県富士山安全指導センター」に、市の提供分を含め全200個を配備した。持ち帰りを防ぐため3000円で貸し出し、返却時に返金するデポジット方式だ。市は1日の貸し出しを「2桁」と見込んでいた。実際には1日平均4個程度にとどまり、市富士山課は「自前で持っているのに着用しない登山者も多かった。いざという時にかぶるのでは遅い」と懸念を隠さない。

 山梨県警によると、今年7~8月の遭難者のうち約6割が転落や滑落、転倒による事故だった。15年度から山梨、静岡両県が実施している調査では、日の出の時間帯や土日祝日の混雑時に「無理な追い越しによる危険があった」との回答は、計4登山道でそれぞれ2~3割に上った。ヘルメットを身に着けていれば「減災」につながる可能性があり、市は来年に向け、県などと連携した啓発活動を検討している。

 ●静岡側持参1.5%

 富士山登山のもう一方の玄関口である静岡県でも着用率アップが課題となっている。

 御嶽山の噴火を受け、登山者の意識向上を図ろうと、15年度に「富士登山おしゃれヘルメットアイデアコンテスト」を実施。「こんなヘルメットなら富士登山に持っていきたい!」「装着して登ったらカッコイイ・カワイイ!」をコンセプトに、アイデアを募集。県内外の個人や企業から101件が寄せられた。

 最優秀賞に選ばれたのは、蓋(ふた)の部分が簡易ヘルメットになるザック。御嶽山の噴火で、ザックをかぶって噴石から頭を守った事例があったことに着想を得たという。

 A4サイズに折りたためる携帯性に優れた作品もあり、一部は商品化に向け企業から声が掛かったが、着用率向上にはなかなか結びついていない。県富士山世界遺産課が週末や祝日の5合目で実施した調査によると、持参率は16年度がわずか1・4%、17年度も1・5%だった。担当者は「他の山に比べ、富士山は観光の延長という登山者が多いからではないか」と分析する。

 県は、登山用品店や大手の旅行雑誌に協力を仰ぎ、ヘルメット着用が必要であることを冊子にして配ったり、記事化してもらったりして着用率の向上を図っている。担当者は「富士山でも転倒や落石の恐れはある。登山は自己責任が基本だが、身を守るにはヘルメットが必要という意識を高めてほしい」と訴える。【田中理知】

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