メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

南スーダンPKO

「宿営地の上、銃弾通過」第10次隊長

南スーダンPKOの状況について振り返る中力修1佐=札幌市南区の陸上自衛隊真駒内駐屯地で2017年11月13日、前谷宏撮影

 南スーダン国連平和維持活動(PKO)に派遣された陸上自衛隊の第10次隊(昨年5~12月)で隊長を務めた札幌市の第11旅団幕僚長、中力(ちゅうりき)修1佐(49)が毎日新聞の取材に応じ、昨年7月に首都ジュバで起きた武力衝突について「銃弾が宿営地の上を通過した」などと緊迫した状況の一端を明らかにした。当時の日報に「戦闘」と記載されていたことには「一般的な定義で使った」とし、PKO参加5原則に抵触する法的な意味ではないとした。【前谷宏】

 中力1佐が昨年12月の帰国後、報道機関の単独取材に応じるのは初めて。

 陸自の施設部隊が活動していたジュバでは昨年7月8~11日、大統領派と当時の副大統領派による大規模な武力衝突が発生した。

 中力1佐や当時の日報によると、同7日夜に小規模な衝突が起き、陸自部隊は8日朝に別の国連施設で予定されていた作業を中止。安全確保のため宿営地で待機を始めた。衝突は当初、市内の別の場所で起こったが、宿営地の隣のビルには反政府勢力が立てこもっており、10日朝になると政府軍が周辺住民を避難させ、同午前11時ごろから始まった銃撃戦は2日間続いた。

 中力1佐は「細部は話せないが、小銃や機関銃の銃弾が一部、宿営地の上を通過したのは事実」と証言。政府軍の戦車砲による衝撃音も響いた。宿営地の一部で流れ弾とみられる弾痕も確認されたという。

 中力1佐は隊員に安全確保を指示。隊員は防弾チョッキやヘルメットを着用し、宿営地内の安全な施設に避難した。「不測の事態に備えた訓練を日本でも現地でもやっていた。我々が狙われたわけではなく、隊員たちは落ち着いて行動できた」と振り返ったが、「(被害が出れば)隊員の家族に何て言おうか」という思いも頭を離れなかったという。ただ、精神面で不調を訴えた隊員はおらず、「帰国まで一人も交代しなかった」とも明らかにした。

 当時の日報に記載された「戦闘」という言葉を巡っては、紛争当事者の停戦合意などを条件とするPKO参加5原則に抵触すると野党が国会で追及した。中力1佐は「(国または国に準じる組織の間の戦闘行為という)法的な意味ではない。上級部隊に正確な情報を報告する必要があり、現場では違和感はなかった」と述べた。一方で「日報は私もチェックしている。基本は私に責任がある」とも話した。

 中力1佐は南スーダンへの派遣について「我々が活動すると現地の方々から感謝される。行って良かった」と振り返った。また、今後のPKO派遣のあり方について「政府が判断すること。答える立場にない」と述べた。

解説 情報公開し議論を

 南スーダンPKOの第10次隊の日報を巡っては、防衛省がフリージャーナリストの開示請求に「廃棄した」と回答した後も陸自内で保管されていたことが発覚。「戦闘」という表現を隠蔽(いんぺい)したとの批判が上がり、稲田朋美防衛相(当時)の辞任に発展した。昨年7月の武力衝突時に部隊が置かれた状況は、いまだに明らかになっていない部分が多い。

 かつて停戦監視や人道支援が中心だったPKOの任務は、住民の保護のために積極的に武力介入する方向に変わりつつある。安全保障関連法の施行で、自衛隊は海外で「駆け付け警護」などが新たに可能となり、中力1佐の次の第11次隊からは武器使用の権限も一部拡大された。ただ、文民保護のためなら積極的に武器を使用できる他国軍に比べ、自衛隊はまだ制約が多いのも事実だ。

 南スーダンから陸自の施設部隊が撤収し、PKOへの部隊派遣はなくなったが、防衛省内では「今後はより厳しい任務がくる可能性がある」との懸念の声も漏れる。自衛隊が置かれている現実について政府は広く情報を公開し、今後の海外派遣や国際貢献のあり方の議論を深める必要がある。【前谷宏】

コメント

投稿について

読者の皆さんと議論を深める記事です。たくさんの自由で率直なご意見をお待ちしています。

※ 本コメント機能はFacebook Ireland Limitedによって提供されており、この機能によって生じた損害に対して毎日新聞社は一切の責任を負いません。また、投稿は利用規約に同意したものとみなします。

利用規約

毎日新聞のアカウント

話題の記事

アクセスランキング

毎時01分更新

  1. 日産会長逮捕 ゴーン神話「数字の見栄え良くしただけ」
  2. 高校野球 誤審で甲子園行き明暗…終了一転逆転 岡山大会
  3. 全国高校サッカー 県大会 西京、5年ぶり全国切符 高川学園の猛攻しのぐ /山口
  4. ゴーン会長逮捕 日産社長「私的流用、断じて容認できない」 会見詳報(1)
  5. 日産 ゴーン会長を解任へ 「会社資金を私的に流用」

編集部のオススメ記事

のマークについて

毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです