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華恵の本と私の物語

/16 ヨルの神さま

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 昼休ひるやすみ、チエがかばんをのぞき、「バレッタがれている。制服せいふくのバッジもない……」とふるえるこえう。子分こぶん女子三人組じょしさんにんぐみが「ひどい」「またなにかされたの?」「だいじょうぶ?」と口々くちぐちい、チエをかこむ。

     去年きょねんは、クラスのいじめを指揮しきしていたチエ。2年生ねんせいになってから、だれかにかばんをらされるようになった。

     わたしもクラスのみんなも、犯人はんにんっていた。

     チエがトイレにっているあいだ子分こぶんたちがかばんをあさっていた。制服せいふくのバッジや筆箱ふでばこのペンをし、バレッタをってゲラゲラわらっていた。

     クラスのみんなも、わたしも、ぬふりをしていた。演技えんぎのうますぎる彼女かのじょたちがこわかったのだ。

     子分こぶんたちの暴走ぼうそうまらず、ついには、チエの携帯けいたいにまでした。

     高額こうがく携帯料金けいたいりょうきんになっても、チエは先生せんせいにもおやにもわず、子分こぶんたちに相談そうだんしていた。彼女かのじょたちが犯人はんにんともらずに。

     わたしはおもって、チエに事実じじつつたえた。担任たんにん土井先生どいせんせいにもらせた。

     数日後すうじつご、わたしは職員室しょくいんしつばれた。

     「今回こんかいのこと、どうおもっている?」

     先生せんせいは、ためらいながらはなはじめた。

     「自分じぶん一番仲いちばんなかいいとおもっていた友達ともだちに、いじめられていたとるのは、先生せんせいだったらショックだな」

     どういうこと……?

     「真実しんじつつたえない方法ほうほうも、あったんじゃないかな」

     われていることがよくわからない。

     「ま、つぎからまたかんがえよう。今回こんかいは、もういいから、な?」

     なみだがポロポロながれた。

     わたし、まちがったことをした?

      + + + +

     小説しょうせつ「ヨルのかみさま」では、中学生ちゅうがくせいめぐみが、よるおそくに公園こうえんつどう「ヨルのかみさま」とその仲間なかま出会であいます。かれらは、まずしいブラジル人男性じんだんせいすく計画けいかくをたてています。めぐみ参加さんかしようとしますが、この作戦さくせんはおとうさんの会社かいしゃ侵入しんにゅうしておこな犯罪はんざいなのです。

     めぐみは、おとうさんに迷惑めいわくをかけたくない。でも、ブラジル人男性じんだんせいすくいたい。

     大人おとな相談そうだんできません。正解せいかいも、ありません。

     著者ちょしゃのあとがきには、こういてありました。

     「ぜんあく中間点ちゅうかんてん、グレーゾーンについてこうとおもいました」

     あのとき、わたしがしたことは、今思いまおもえば、正解せいかいでも間違まちがいでもない。

     そもそも、ひと気持きもちをかんがえるとき、そこには正解せいかいなんてないのかもしれない。それでも、正解せいかいでなくても、そのとき自分じぶんこたえを一生懸命探いっしょうけんめいさがせば、それがあと自分じぶんちからになってくれる。

     土井先生どいせんせいおぼえているかな。いまだったら先生せんせいとどんなはなしができるだろう。そんなことを最近さいきんおもいます。


    『ヨルのかみさま』

    樫崎茜かしざきあかねちょ

    講談社こうだんしゃ品切しなぎれ、重版未定じゅうはんみてい


     エッセイストの華恵はなえさんが、ほんにまつわるおもきなほん紹介しょうかいします

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