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文芸ジャーナリスト・酒井佐忠さんの「詩」に関するコラム。

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加藤楸邨のリアル=酒井佐忠

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 加藤楸邨に師事した今井聖の新刊『言葉となればもう古し-加藤楸邨論』(朔出版)が、刺激に満ちた楸邨論を展開している。中村草田男、石田波郷とともに「人間探求派」といわれる楸邨だが、彼は単にヒューマニズムや人生論的な意味で俳句に向かっていたのではない。ただいま現在の個としての人間の眼前にあるリアルな現実にひたすら真向かっていた。そうした楸邨の表現の原点を追いながら今井は、現在の俳句表現のあり方を問うている。

 正岡子規が唱えた「写生論」が、高浜虚子の「花鳥諷詠」ではなく、楸邨の「リアルの認識」にいかにつながって行ったかを説く第2章「リアルの系譜-子規から楸邨へ」が読みどころ。第二芸術論をはじめ、俳句が抱えたさまざまな問題が集約される。概念優先、あるいは「宗匠俳句的」な詩情や「近代詩憧憬のモダン派的」な新興俳句などからあくまで遠く、「人間の(自分の)五感を起点にして受け取ったものだけ」、また、「一回性の…

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