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三浦 天紗子・評『満天のゴール』藤岡陽子・著

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過疎地医療を舞台に描く 切ない生と温かな死

◆『満天のゴール』藤岡陽子・著(小学館/税別1400円)

 33歳の専業主婦・奈緒は、夫に裏切られ、息子の涼介を連れて京都・丹後半島の北端にある故郷に帰ってきた。うじうじと離婚を悩んでいた奈緒だが、利発で優しい10歳の涼介や、過疎地の医療に献身する35歳の三上医師に背中を押され、町の大病院〈海生病院〉で働き始める。木田看護部長、訪問看護をする看護師の小森さん、奈緒と涼介の隣人で世捨て人のような老婦人の早川さん、限界集落で独居する88歳のトクさんなど、地域の医療人や患者たちとの交流を通して、よりよく死ぬとは何か、よりよく生きるとは何かという命題を見つめ直していく。

 著者は巧みに、評者がこれまで本欄で取り上げてきたような、現代医療の課題を物語の中に滑り込ませている。たとえば、奈緒は看護師の有資格者だが、母の死をめぐる医療不信があり、一度も現場で働いたことのないペーパーナースだった。彼女が資格を生かすことで、人手不足の状況にどんな変化が生まれるのかが具体的になる。医療過誤の問題も、何がその要因となるのか、どう解決すべきなのかのヒントが見える。実は著者は現役の看…

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