メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

教育改革シンポジウム

第8回高大接続教育改革シンポ 大学入学後見据えた改革を 

あらせ・かつみ 京都市立堀川高で教頭、校長として「探究科」を創設し、課題探究型の教育で学校を改革。短期間で大学への進学実績を飛躍的に上げた「堀川の奇跡」で知られる。その後、京都市教委教育企画監を経て、2014年から大谷大文学部教授。専門は国語教育。中央教育審議会初等中等教育分科会の委員なども務めている。

大谷大・荒瀬克己教授(京都市立堀川高校元校長)が講演

 2020年度に大学入試センター試験に代わって始まる大学入学共通テスト。試験内容の変更点への関心は高まっているものの、教育改革の目的そのものが話題になることは少ない。11月15日に東京都千代田区の毎日新聞東京本社毎日ホールであった「第8回高大接続 教育改革シンポジウム」(駿台予備学校、大学通信、毎日新聞社共催)では、京都市立堀川高元校長で大谷大文学部の荒瀬克己教授が「高大接続改革への願い」と題し、高校で大学入学後を見据えた教育をする重要性について語った。

    講演要旨

     20年度に大学入学共通テストが始まる。世間の注目は、英語での民間試験の活用や国語、数学での記述式問題の出題のように「試験がどのように変わるか」に集まっている。しかし、新しいテストが、高校での学びと大学での学びをつなげる高大接続改革の一環として導入されることを忘れてはならない。高校には、生徒が合格して大学に入るための対策ではなく、生徒が大学で学ぶための基礎を養う教育をすることが求められている。

     例えば、入試で数学を課さない経済学部がある。数学を必須にすると、受験生を集められないからだ。数学が苦手な高校生や保護者がそんな経済学部の受験を希望すると「よい受験先を見つけたね」と言って喜んで後押しする高校の校長もいる。十数年前と変わっていない。それでよいのか。本当なら、高校は「数学ができない生徒が大学に入学した後、講義についていけるのだろうか」と立ち止まらなければならない場面だ。

     ●「考え行動」を養う

     ただし、大学で学ぶための基礎は知識だけでない。

     私が大学の講義で学生に「質問があるか」と尋ねても、挙手はない。高校で生徒が能動的に学ぶアクティブ・ラーニングが浸透しつつあるが、知識の使い方を知らなかったり、質問して納得できる回答を得る必要性を感じたりしない学生は少なくない。グループワークの後の感想も「いろいろな考えの人がいると知った」「誰かに自分の考えを伝えることの難しさが分かった」という程度。新しいテストの実施とつながる高大接続改革の肝はまさにここだ。

     国際的な調査の裏付けもある。日本は「自分の働きかけで社会が変化する」と感じている高校生の割合が米国、中国、韓国よりも低い。一方、日本は「自分はダメなところがある」と思っている高校生の割合が他国に比べて高い。高校生にとって、知識や技能を身につけるだけでなく、深く考えて行動ができるようになること、社会の中で人や物事と関わって一人の人間として生きていけるようになることが大切なのだが、高校で養えているだろうか。

     ●生徒伸ばす計画を

     私がいた京都市立堀川高では、進路検討会に担任や進路担当だけでなく、各教科担当の教員、管理職が参加していた。志望校に加え、生徒の心理的な状態や、生徒と保護者の考えが一致しているのかも議題にする。各教科担当の教員が自身の授業で見せない生徒の一面を知ることで多面的な評価ができる。

     高大接続改革でも高校生を多面的に評価することを促しており、それに伴って大学の入試も変わる。高校はもっとカリキュラム・マネジメントを大切にすべきだ。各教科の時間割を作るという意味でなく、どのようにして生徒の力を伸ばすのかの計画を立ててほしい。高校生は学力や部活動だけで評価されがちだ。しかし、問いかけ、話し合い、向き合うことで育まれる能力を評価することが生徒の「次」につながる。大学入学後を見据えた教育を大切にしてほしい。【構成・水戸健一】

    質疑 正確な自己採点必要 共通テスト

     講演後は荒瀬教授、大学通信常務の安田賢治氏、駿台教育研究所進学情報事業部長の石原賢一氏の3人が、高大接続や入試の改革などについて会場を訪れた約70人の高校、大学関係者からの質問に答えた。質問内容はやはり試験の変更点に集中した。

     大学入学共通テストで、思考力や表現力を評価するため国語と数学で導入される記述式問題の採点基準は、13日に始まった試行調査(プレテスト)の結果を踏まえて決められる。しかし、受験生が出願先の大学を決める際の材料にする「自己採点」が、マークシート式のように正確にできなくなる懸念がある。

     この点について石原氏は過去の記述式の模試を振り返り、「成績上位者は正しく自己採点できている。成績のふるわない層は自己採点が甘めになる傾向がある」と説明。「採点基準を理解して正確に自己採点できる力を付けさせることが肝心だ」と強調した。

     会場からは「多面的な評価は重要だが、生活まで含めると、生徒の人格の否定につながる恐れがある」との意見も出た。荒瀬教授は「生徒をがんじがらめにする評価は正しくない。改善の指導まですることが大切だ」と答えた。

    英語民間試験の要件発表 不公平の懸念消えず

     文部科学省は11月8日、大学入学共通テストの英語で活用する民間試験の要件を発表した。高校の学習指導要領との整合性があり、原則、全都道府県で複数回の試験を実施することなどを求めている。しかし、4年程度は会場数が「10カ所以上」確保されれば認め、受験料も「適切」としているだけで上限などを定めていない。居住地や家庭の経済状況によって受験機会に差が出るとの懸念は消えていない。

     文科省が例示してきた民間試験は英検やTOEFL、GTECなど10種類弱あり、用途は海外留学やビジネス向けなどさまざま。会場数も15~1万7000カ所、受験料も5000~2万5000円台と開きがある。学習指導要領との整合性について文科省の担当者は「過去問を基に判断する」と説明するが、高校から「指導要領から離れている」と指摘されるものも含まれている。それでも、中央教育審議会で大学入試改革に関わった大学関係者は「国際指標のCEFR(セファール)の段階評価ができれば公平性は保てる。高校生になじみのある民間試験はすべて認められるだろう」と話す。

     国立大学協会(国大協)は11月10日、国立大の受験生に「23年度までの4年間、民間試験とマークシート式の試験の両方を課す」と決めた。国立大の足並みがそろい、受験生が志望校を変えやすくなったが、両方の勉強をしなければならず、受験料の負担も大きい。ある都立高校長は「公平性や活用法など課題は多く、現場には民間試験導入に懐疑的な見方が根強い」と打ち明けた。【金秀蓮】

    おすすめ記事

    毎日新聞のアカウント

    話題の記事

    アクセスランキング

    毎時01分更新

    1. 丸山氏、衆院理事会の聴取欠席 「2カ月の休養必要」という診断書提出
    2. 中東 動物兵器、うごめく
    3. 丸山衆院議員 聴取欠席へ 「女を買いたい」週刊誌報道、戦争発言など 自民、弁明提案
    4. 自民党・石破茂さんインタビュー 「冷や飯」の味を語る
    5. 「丸山氏早く辞め病院へ」松井一郎大阪市長 「完全に一線越えている。社会人として失格」

    編集部のオススメ記事

    のマークについて

    毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです