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余録

「私は蛇が脱皮するように、自分自身を捨てた…

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 「私は蛇が脱皮するように、自分自身を捨てた。それから私は目を上げて見る。自分が神となったことを」。9世紀のイスラム神秘思想家バスターミは自らの体験を述べる▲スーフィズムとはこのように神と一体化する境地を求めるイスラム思想で、スーフとはその修行者がまとった粗末な羊毛の衣という。神秘体験のために音楽や踊りも用いられ、正統派イスラム法学者からは異端として批判されてきた▲犠牲者の多くがスーフィズムの信徒だった。エジプトのシナイ半島のモスクが武装集団に襲撃され、300人以上の死者と百数十人の負傷者が出た惨事である。過激派組織「イスラム国」(IS)傘下組織による犯行と見られている▲そのISシナイ州を名乗る集団は、キリスト教徒へのテロを繰り返すとともにスーフィズムも攻撃対象に挙げていたからだ。攻撃は一般信徒も交じるモスクで爆発を起こし、逃げ出した人々を狙って銃撃を浴びせる残虐なものだった▲反対派を力で抑え込んできたエジプトのシシ政権には治安対策の穴を突かれたかたちで、国内の緊張は高まろう。犯人たちにはなぜ同じイスラム教徒を……と問いたくもなるが、むしろ縁の近い異端者に対してこそ残虐な仕打ちをためらわないのが人類のさがである▲「もし神が許さなかったら天国は空っぽになる」はアラブの格言という。宗派対立が政治をも動かす今日の中東だが、罪のない信徒を犠牲にしてはならない。すべてのイスラム教徒がその一点で連帯できないか。

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