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著者インタビュー 岩村暢子 『残念和食にもワケがある 写真で見るニッポンの…』

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子供の将来にどうつながるか一人ひとりに考えてほしい

◆『残念和食にもワケがある 写真で見るニッポンの食卓の今』岩村暢子・著(中央公論新社/税別1500円)

 自分たちに都合の良いイメージを打ち壊すのは、事実の重みである。アンケートを取った主婦400人以上、記録された食卓写真1万5千枚以上という集積の中から、私たちが「和食」と呼んでいるものの実態を明らかにする本が現れた。

「1週間、毎日の食卓写真撮影と日記記述が必要なので、根気のある方しか続けられません。調査会社に依頼すると“調査慣れ”した人ばかりになるので、伝手(つて)をたどって一人ひとりお願いしていきます。年収や家族構成など、偏りの出ないように配慮しながら探します」

 しかも岩村さんの方法は徹底的にアナログだ。費やされる労力と時間は尋常ではない。

「大量の食卓写真、日記、発言記録を、目を皿のようにして見て、読んで、抽出し分析していきます。人間の脳と目だけが頼り。デジタル解析ではできません」

 岩村さんの研究は「食DRIVE」調査に基づくもので、これは1960年以降に生まれた、首都圏在住の子供を持つ主婦を対象としている。食卓を定点観測の場とし、その世代以降の親たちがどんな家庭を志向し、実践しているのかを明らかにしようという点に特長がある。

「共通一次が始まった世代で、家電もどんどん普及していきました。炊事の手伝いをした経験が激減した世代でもあり、その人たちが親になった結果が今、食卓に出ているわけです。日本政府は、50年代後半から60年代にかけて洋食化、パン食化、肉食化を推進してきました。それが今になって農水省や厚労省は、和食がやっぱり大切、と言って、自分たちが一度進めたものを押し戻そうとしています」

 本書に出てくる「和食」の実態を見ると、憶(おぼ)えのある光景が出てくる、出てくる。ラーメンにおにぎりといった、主食+主食の重ね食い。子供は「味がない」と言って白いご飯は食べない。味噌汁が出ないことはあっても冷たい飲料がないことはまれで、特に麦茶依存は高く、和食だろうがイタリアンだろうが中華だろうが、麦茶で流し込む。

 「和食」はたしか、ユネスコ無形文化遺産に登録されたのではなかったか? 何を見て「和食」と呼んだのか? リアリストの岩村さんは、現状を肯定も断罪もしない。願うのは、一人ひとりに考えてもらうことである。

「テーブルの上だけで終わる問題ではないんですね。自分がどんな家庭を作り、どんな暮らしをしたいのか。今自分がやっていることは何をしていることになるのか、子供の将来にどうつながるのか、一つひとつ具体的に、根本的に考える材料を提示できたらと思うんです。

 私は、和食こそすばらしい、手作りが一番なんて言うつもりは毛頭ありません。自分の哲学と能力に従って加工食品中心でいくのも良し、それぞれの現実に根差して、変えるべきところを変えられたらいいと思います」

 かつての和食だって、専業主婦の大きな負担の上に成立していた側面も見逃すわけにはいかない。仕事をする女性がこれだけ増えた今、それを取り戻せるわけもないし、必要もない。

 さあ、私たちはどうするか。食べ方は生き方である。(構成・北條一浩)

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岩村暢子(いわむら・のぶこ)

 1953年、北海道生まれ。大正大客員教授。キユーピー顧問。食と現代家族の調査・研究の第一人者で、著書に『変わる家族 変わる食卓』『普通の家族がいちばん怖い』など。『家族の勝手でしょ!』で第2回辻静雄食文化賞受賞

<サンデー毎日 2017年12月10日増大号より>

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