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社説

エジプトのモスク襲撃 テロの対象拡大を憂える

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 人々が祈りをささげる場を武装集団が襲撃し、爆弾と銃乱射で300人以上が犠牲になった。エジプトのシナイ半島で起きたモスク襲撃事件だ。無防備な人々を狙った無差別テロに強い怒りを覚える。

     武装集団は過激派組織「イスラム国」(IS)傘下の「ISシナイ州」(旧名「エルサレムの支持者」)との見方が強い。2015年のロシア機爆破で犯行を認めた組織だ。

     注目すべきはスーフィズム(イスラム神秘主義)系のモスクが襲われた点だ。信者たちはISと同じスンニ派のイスラム教徒だが、武装集団から「異端」とみなされたらしい。

     だとすれば、もっぱらシーア派イスラム教徒やキリスト教徒を標的としてきたIS系の組織が、襲撃対象を拡大したと考えるべきだろう。

     シリアやイラクで重要拠点を失ったISの戦闘員はエジプトにも流入している。襲われたモスク周辺の部族はエジプト当局の過激派掃討作戦への協力を約束したとされる。モスク襲撃はそれに対するIS側の報復と解釈するのが自然だ。

     だが、スーフィズム自体は異端とされる存在ではない。神秘主義といえば秘密めくが、もともとは粗末な羊毛(スーフ)をまとい、「宗教的により敬虔(けいけん)な生活を送ろうとした人々」をスーフィーと呼んだ(平凡社「イスラム事典」より)。

     朗唱や舞踊などを通じて神の意思を追い求めるスーフィーの中には歴史上著名な学者や、スンニ派の最高学府アズハル(エジプト)の宗教指導者も含まれるという。エジプト人の約15%はスーフィズムに関係しているとの論文もある。

     過激派が神秘主義を異端と決めつけるいわれも権限もない。勝手な理屈で人の命を奪うのはイスラム教をおとしめるだけである。

     20年前、エジプトのルクソールでは過激派による乱射事件で日本人観光客を含む60人以上が殺された。13年には民選大統領がクーデターで拘束され、イスラム組織と政権側の激しい抗争が始まった。

     古代文明の地・エジプトの治安が悪化し続けているのは残念である。観光地だったシナイ半島を過激派の拠点にしないためにも、シシ政権は穏健派イスラム組織との協調を含めた柔軟な対応が必要ではないか。

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