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「おひとりファースト」の時代へ~ミドルおひとり女子が創る、大独身マーケット

第6回 いくらなら買う?「おひとり時間」ニュービジネス=マーケティングライター・牛窪恵

 40、50代の自立した独身女性、「おひとりウーマン」。

 おひとり様と聞くと、多くがイメージするのは「ひとり暮らし」だろう。だが、いまや40、50代の独身女性でも、約6割が親と同居する「パラサイト・シングル」(2015年(財)年金シニアプラン総合研究機構調べ)。

 その数は、40代の未婚パラサイト(女性)だけで、90万人以上もいる計算だ(15年 総務省「国勢調査」)。

 彼女たちの多くが口にするのは、「ひとりになりたい」。

 親と同居する限り、自宅でひとりになれる空間は、自室とトイレ、それに風呂ぐらいしかない。逆に言えば、それだけ「お風呂」は同居シングルにとって、重要なポジション。高級なバスボムを買ってリラックスしたいと願うのも、一つにはそのためだ。

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 さらに最近は、外部のお風呂や専用施設に「おひとり時間」を求める女性たちも増えた。人気急上昇のトレンドキーワードは、「プチ湯治」。

 中でも、東京都内で手軽にプチ湯治を味わえる場として人気なのが、東京・西麻布の「Le Furo(ルフロ)」【写真】だ。

 体感用に用意される部屋は、サウナのイメージに近い。ただ室温は42度と暑すぎず、湿度80%に保たれた空間に十数種類の薬石が敷かれている。

 ここに体を横たえ、「酸性温泉ミネラルミスト」を全身から吸収。すると内臓機能が高まり、老廃物や有害物質を体から押し出す効果が期待できるという。

「会社帰りにここに寄るのが、いま最高の贅沢なんです」

 そう話したのは、以前、私がLe Furoの取材時に出会った、ある40代の未婚女性。

 いわく、彼女の父親は九州男児。毎日当然のようにお風呂を独占するから、自宅(親と同居)には、じっくり体や心と向き合える空間がない。ゆえに、定期的にLe Furoに来ているそうだ。

 (株)Le Furoの代表取締役・三田直樹さんによると、西麻布店、鎌倉店を訪れる顧客の来店頻度は、平均で「週3回以上」がメインだという。月会員も含まれるとはいえ、かなりのヘビーユーザーと言えよう。

 もっとも、40、50代のおひとりウーマンには「時間」がない。一般には、若いころに比べて責任ある業務や立場を任されるなど、仕事に縛られているから。

 だからこそ、ちょっとした時間で効果が期待できる「プチ湯治」のようなものにハマりやすいのだろう。

すき間の朝時間で「崖っぷち温活」

 短時間利用の象徴が、「朝」のひと時に楽しめる、商品やサービス。

 朝時間のヨガ、いわゆる「朝ヨガ」を受講できる、東京・広尾の「マグマスパスタジオ インシー」【写真】もその一つだ。

 マグマスパとは、(株)マグマスパジャパンの代表・小泉正太さんが考案した、体温上昇装置。一般的なホットヨガは汗腺から汗をかくが、インシーは富士山の溶岩プレートの下に約30種もの薬石を敷き詰める、などによって“皮脂腺から”の汗で体温を上昇させるのが特徴だそう。

 あるテレビ番組で私のメークを担当してくれた女性(48)は、インシーに通う理由をこう話した。

「仕事に左右されない、朝の時間に通えるのが大きい。それに50歳になってからじゃ、鍛えても体質は変わらないって言われたので」

 同年代としてドキッとする発言だが、確かにそうだろう。たとえるなら、崖っぷち婚活ならぬ「崖っぷち温活(冷えを解消して体を温める活動)」。

 おひとりウーマンも40、50代ともなれば、年齢的に基礎代謝の衰えを実感しやすい。ヨガにも、体温上昇など体質改善が望めるものに興味を示すのも、むべなるかなだ。

 一般の調査でも、ヨガ人口は現在、年間約770万人。月1回以上ヨガを実施する人も590万人ほどいて、レッスン料やウエア代も含めた市場規模は約2600億円にのぼる。

 数あるヨガでも昨今、人気なのは、「ピラティス」(20.3%)と「ホットヨガ」(17.2%)(17年 〈株〉セブン&アイ出版調べ)。

 とくに、おひとりウーマンに人気なのは、「温活」が期待できる後者だった。

 また、先のとおり「朝」に受講できる点もポイントだ。

 朝型ライフスタイルマガジン「朝時間.jp」を運営するアイランド(株)の調査によると、40、50代の独身女性はもともと、既婚女性よりやや起床時間が遅いそう。

 ただ、ひとたび朝型生活に切り替えると、「おひとり様は既婚女性より、『毎日の生活に〝充実感〟を抱くようになった』と答える割合が高い」と、同代表取締役の粟飯原理咲さん。

たとえ早起きした時間がほんのちょっとでも、彼女たちシングルはその分、誰かのためでなく、自分自身の趣味や仕事に充てやすいからだろう。

お得なホテル朝食で「心」をスイッチング

 もう一つ、ここ数年、おひとりウーマンが注目し始めたのが、ラグジュアリーホテルの「ホテル朝食」だ。

 10、20代のころ、卒業パーティや、彼氏とのデート、友達の結婚式などでホテルになじみも深い、現40、50代女性。とはいえ、近年はインバウンドの増加もあり宿泊料金は値上がり傾向で、なかなか1泊する余裕まではない。

 では「ホテル朝食」ならどうか。

 以前は、宿泊客だけの特権と思われていたが、いまでは一般客に広く開放するホテルも増えてきた。一般には、ディナーや宿泊に比べて価格も廉価である。

 たとえば、東京・目白にある「ホテル椿山荘東京」。落ち着いたヨーロピアン調の館内に「癒やされる」と話すおひとりウーマンも多いが、ここでもイタリアンレストラン(「イル・テアトロ」)やロビーラウンジ(「ル・ジャルダン」)【写真・イメージ】で、1800円から(税込・サービス料別)、お得な朝食メニューが味わえる。

 37歳で建材メーカーを退職、現在は母親の看病をしながら地元の不動産会社で働くハルエさん(42)も、ここでの「ホテル朝食」が唯一無二のご褒美。

 初めてその存在を知ったとき、「つらい時期だったから、まるで『砂漠のオアシス』を見つけたみたいにうれしかった」とのこと。いまでは、ロイヤルパークホテル ザ 汐留(汐留)や、セルリアンタワー東急ホテル(渋谷)など他ホテルの朝食も利用し、意識的に「心」のスイッチングを図る。

 癒やしを求め、近郊の温泉旅館に行くのもいいが、「最近は、ほんの一時でも都内のホテルで過ごすほうが、時間や費用、疲れ具合などを考えてお得だ、と話す女性たちもよく見かけます」と、ホテル椿山荘東京・マーケティング課の眞田あゆみさん。なるほど、納得である。

 忙しい毎日の中で、「砂漠のオアシス」を探している、おひとりウーマン。

 彼女たちが求めるのは、手軽に、それもちょっとしたすき間時間で味わえる、日常寄りの「おひとり時間」にほかならないのだ。

「おひとりウーマン」消費! 巨大市場を支配する40・50代パワー(毎日新聞出版・1450円)

「『おひとりウーマン』消費! 巨大市場を支配する40・50代パワー」(毎日新聞出版)

 コラムの筆者・牛窪恵さんが40・50代の独身女性や関連企業約40社を半年以上取材し執筆した最新刊「『おひとりウーマン』消費! 巨大市場を支配する40・50代パワー」が毎日新聞出版から発売されます。「おひとりウーマン」とは、みずから働き、気持ちのうえでも自立した、40、50代の大人の独身女性。「おひとりさまマーケット」「草食系男子」などの流行語を世に広め、数々のテレビ番組のコメンテーター出演でもおなじみの著者が、13年間ウォッチングを続けてきた「おひとりウーマン」の消費志向やライフスタイル、恋愛や結婚願望に深く迫ります。amazonでの購入はこちらからどうぞ。

牛窪恵

世代・トレンド評論家。マーケティングライター。インフィニティ代表取締役。同志社大学・創造経済研究センター「ビッグデータ解析研究会」部員。現在、立教大学大学院(MBA)通学中。 オフィシャルブログ:アメーバ公式ブログ「牛窪恵の「気分はバブリ~♪」」(http://ameblo.jp/megumi-ushikubo/
財務省 財政制度等審議会専門委員、内閣府「経済財政諮問会議」政策コメンテーターほか、官庁関係の要職多数。
1968年東京生まれ。日大芸術学部 映画学科(脚本)卒業後、大手出版社に入社。フリーライターを経て、2001年4月、マーケティングを中心に行う有限会社インフィニティを設立。
トレンド、マーケティング関連の著書多数。「おひとりさま(マーケット)」(05年)、「草食系(男子)」(09年)は、新語・流行語大賞に最終ノミネート。テレビコメンテーターとしても活躍中。
【代表作】
『男が知らない「おひとりさま」マーケット』(日本経済新聞社)
『独身王子に聞け!』(日本経済新聞社)
『草食系男子「お嬢マン」が日本を変える』(講談社)
『「バブル女」という日本の資産』(世界文化社)
『恋愛しない若者たち』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
『「男損(だんそん)」の時代』(潮出版社)
『「おひとりウーマン」消費! 巨大市場を支配する40・50代パワー』(毎日新聞出版)ほか多数

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