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モリシの熊本通信

仮設住宅は仮の住まい /佐賀

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 着実に復興が進む熊本地震の被災地。しかしながら、今も4万人を超える人々が、応急仮設住宅やみなし仮設住宅で暮らしている。復興の陰で、こうした人々は、人知れず、さまざまな悩みを抱えている。

     先日、農業を営む30代の知人男性に話を聞こうと、熊本県西原村を訪ねた。男性は本震で築100年を超える自宅が全壊。テント生活を送った後、昨年7月から、村内の応急仮設住宅に両親と3人で暮らしている。

     男性は、地震によって生業の一部を失った。

     地震前まで、自宅の近所で米を栽培していた。収穫した米は家族で消費。余った分は貴重な現金収入となっていた。

     しかし、地震により、農業用水を供給するダムが損壊。取水できなくなった。男性は米作りを断念。米による現金収入がなくなった上、消費する米も購入せざるを得なくなった。

     一家は、思い切ってサツマイモ栽培に切り替えた。米と比べると、水をそれほど必要としないからだ。ダム復旧の見通しは、今も立っていない。不安は残るが、今はこうするしかない。

     水田は手入れをしなければすぐに荒れてしまう。「一刻も早くダムが復旧してほしい」。生活がかかっているだけに、男性の思いは切実だ。

     最近、良いニュースがあった。自宅の再建先が見つかったのだ。ただし、元の地区とは別の地区となる。

     実は地震後、全壊した自宅の真裏に断層が走っていたことが分かった。悩み抜いた末、同じ場所への再建を諦めた。

     生まれ育った思い出の地。地元愛から、消防団員も務めていた。地震後は地区内をかけまわり、住民の安否を確認した。地元を離れる決断について、「悔しいが仕方がない」と唇をかむ。

     自宅は現在設計中で、2018年中にも完成予定。それから30年以上かけて、建築費用を返済していく。将来への不安も、もちろんある。ただ、「借金があると責任感が芽生えて仕事もがんばれますよ」と、自分に言い聞かせるように力強く語ってくれた。

     仮設住宅はあくまで仮の住まい。次なる生活に向けて、皆が準備を進めている。


     ■人物略歴

    田中森士(たなか・しんじ)

     マーケティング会社「クマベイス」(熊本市)代表取締役、ライター。熊本県立高常勤講師、全国紙記者を経て古里の熊本市で起業した。熊本地震後は、復興支援活動に携わりながら、執筆やイベントを通し、被災地の現状を伝えている。モリシは愛称。熊本市南区在住。

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