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松尾貴史のちょっと違和感

魔法の呪文「健康のため」 誤った情報もごまかせる?

=松尾貴史さん作

 「健康のためなら死んでもいい」という冗談があるが、「健康のため」という魔法の呪文は、多くの誤った情報もごまかせる力があるようだ。健康オタクと呼ばれる人や自称する人は多いが、「健康のため」にエネルギーや時間や金銭を費やすことに私は懐疑的だ。「健康のために何かをすることは不健康」と話すこともある。もちろん程度問題で、自分にあった枕を購入したり、散歩をしたり、体の中で作れないカルシウムや鉄分などを補給したりといったことについては、通念上何も疑うところではない。 

     古くは紅茶キノコ、ピラミッドパワーの類いから、水に溶く緑色のもの、コラーゲン、ヒアルロン酸、コエンザイムQ10、コンドロイチン、何ちゃら酵素など、いろいろな一見科学的な成分を配合しているとうたうものも数え切れないほどある。「摂取しているおかげで調子がいい」と錯覚させてくれるプラセボ効果のような利点もあるやもしれないけれど、実際にその「薬効」のようなものが力を発揮することには眉唾でいた方がいいのではないか。

     例えば、コラーゲンなどは体の中に入って胃腸から吸収される過程で、構成している分子の「文脈」は解消されてしまうので、その後に肌などの潤いや弾力性を保つ役割は果たせない。再びコラーゲンとして成立する確率はあまりにも低すぎる。「コラーゲン鍋を食べれば次の日肌がツヤツヤ」という現象は、単に前の日に食べたものが重かったから、てかってしまっただけなのではないだろうか。飲食店のリポートをする人が、もうそれが既定の事実であるかのように「おいしい上にコラーゲンがたっぷりで肌にもいいです!」と無責任な評価を垂れ流すのは、いささか違和感を覚える。

     そういった商品群の全てが無意味だというのではなく、害が出るわけではないから何でも売り文句にできるようなムードのものも少なくない。一見科学的な売り文句は、消費者には検証が難しい。そして、そこには結構な価格が設定されている。つまりは、好き嫌いせず自然の食品をバランス良く何でも食べるようにしていれば、案外健康を保てるのではないかと思っている。

     ダイエットについてもブームというよりは、この数十年間、手を替え品を替え、ジョギング、断食、バナナダイエット、キャベツダイエット、プロテインダイエット、糖質制限ダイエット、低炭水化物ダイエットなど、いろいろなものが生まれている。「何とかブートキャンプ」などというものもあった。

     しかし、なぜそれほどまでにして痩せたいのか。膝に負担がかかるとか、立ち居振る舞いに支障をきたすほどの肥満であれば改善が必要かもしれないが、「痩せなきゃ」と言っている女性が、その時点で素晴らしく均整がとれているようなことはいくらでもある。

     有名なジムで有名人が劇的に痩せるのを、テレビコマーシャルなどでよく見る。個人的な感想で人にもよるが、精悍(せいかん)に「締まった」というより、貧相に「しぼんだ」ように見える人が多いように思う。決して、魅力が増したわけではなさそうなのだ。「元の方がいいよ」と何度思ったことか。

     メタボリックの基準も、ひょっとしてアメリカあたりの影響か圧力ではないのかと疑いたくもなる。私は福々しい大人が再評価される時が来るのを、ひそかに待ち続けているのだ。(放送タレント、イラストも)

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