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コロンビアは今

和平合意から1年/4 続く国民の「分断」

FARCが埋めた地雷で右足の一部を失い義足で生活するセルリ・ロチャさん=ボゴタで2017年12月2日、山本太一撮影

 内戦中、多くの殺人や誘拐に関与した左翼ゲリラ「コロンビア革命軍」(FARC)。その政治参加や事実上の恩赦を認めた和平合意に対し、遺族らの評価は分かれたままだ。

     「とてもつらく、心が痛かった」。マルタ・ルースさん(63)は、ボゴタの自宅近くの社交クラブで30人以上が死亡した2003年2月の爆弾テロ事件を振り返る。いずれも大学生だった次男アレハンドロさん(当時20歳)は死亡、長男フアンカルロスさん(37)は意識不明の重体となった。幸いフアンカルロスさんは意識を回復し、半年のリハビリを経て大学に復帰できた。

     その後、FARCメンバーのテロへの関与が裏付けられるなど事実関係が判明。友人らの精神的な支援を受けるにつれ、ルースさんは「次男は二度と帰ってこず、現実を受け入れなければならない。FARCに対する憎しみはない」と思えるようになったという。

     国会では現在、FARCによる犯罪を明らかにする特別法廷の法整備が進む。自身の経験を踏まえ、ルースさんは「真実が明らかにならない限り、遺族や被害者の心の癒やしにつながらない」と真相究明に期待を寄せる。

     ボゴタに住むセルリ・ロチャさん(30)は12歳の時、地元の北部ボリバル県の畑でFARCが埋めた地雷を踏んで右足の膝下を失った。義足で生活する今も「地雷を踏んだ瞬間がトラウマとして残っている」と明かしつつ、「FARCが武器を置いて平和になった」と和平合意は歓迎する。ただ、5年前に政府の支援でつけた義足はサイズが合わず、接続部分が傷ついているという。「政府は早く義足を取り換えてほしい」と、むしろ政府への不満が強い。

     和平合意を受け入れる遺族や被害者がいる一方、国民のFARCへの不信感は根強い。FARCが政党「人民革命代替勢力」になった後の今年10月末に実施された米ギャラップ社の世論調査では、6割以上が「FARCは和平合意を履行しないと思う」と回答した。

     政府軍の指揮官だった父が1998年にFARCに誘拐、殺害されたボゴタのジェニア・アルバドさん(25)は「幼い頃の出来事だが、今も思い出すのがつらい」と声を震わせ、「FARCに譲歩した和平合意は絶対に反対だ」と憤る。

     和平合意は昨年10月の国民投票で小差で否決された。だがその後、内容を一部修正した上で、国民投票にかけず、議会承認で発効した経緯がある。

     和平合意の否決を主導したウリベ上院議員(元大統領)が率いる中央民主党は10月、合意の無効か変更をにらみ、再度の国民投票を実施するため署名集めを始めた。

     同党所属のアルバルド・プラダ下院議員(44)は「今も700人がFARCに誘拐されたまま、行方が分からない状況だ」と指摘し、「犯罪を犯したFARCが政治参加したり、元メンバーに免責を与えたりするのは到底、受け入れられない」と強調する。来年3月までに国民投票の実施に必要な約170万人を超える300万人分の署名を目指す。

     和平合意後も残る国民の分断。「真の和解」に向けたコロンビア社会の苦闘は終わらない。【ボゴタで山本太一】=つづく

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