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諫早湾

干拓事業、着地いつ 和解提案に拒否続く

「年々、漁港に活気がなくなってきた」と寂しがる松本正明さん=長崎県島原市で、中尾祐児撮影

 国営諫早湾干拓事業(長崎県、諫干)の排水門開門を命じた福岡高裁確定判決から6日で7年を迎える。国は開門しておらず勝訴した漁業者に支払う制裁金(罰金)は11月に10億円を突破した。国は開門差し止めを命じた長崎地裁判決(今年4月)を受け、開門せずに漁業振興のために100億円の基金を設ける形で和解を目指すが、漁業者は拒否を続ける。着地点が見えないまま、制裁金が膨らむ異例の事態が続く。【中尾祐児】

     「漁業はどん底のどん底だ」。長崎県島原市の有明漁協組合長、松本正明さん(65)は嘆く。かつては冬場に月約500万円の水揚げがあった二枚貝のタイラギ漁は諫干着工後の1993年以降、休漁が続く。約250人いた組合員も約140人まで減った。

     97年の潮受け堤防閉め切り後、松本さんら有明海沿岸の漁業者は国を相手に「不漁の原因究明のため開門調査が必要だ」と提訴した。2010年、福岡高裁は訴えを認め、国が上告せず判決が確定。しかし、国は干拓地の営農者らの反対を理由に開門調査をせず、勝訴原告45人に1日45万円(現在は90万円に増額)の制裁金を支払うことになった。

     制裁金は今年11月末時点で10億1250万円に膨らんだ。有明海再生に役立てるため、漁業者側弁護団が一括してプールしている。

     制裁金の支払いが続く中、国は営農者らが原告になった訴訟で長崎地裁から開門の差し止めを命じられ「開門しない」方針を表明した。国が描くのは、判決に先立つ和解協議で示した100億円の漁業振興基金設立による解決。だが、漁業者の評価は芳しくない。

     農林水産省は05年以降、不漁などの有明海異変を受け再生事業に約450億円を投入してきた。だが、松本さんは「目立った効果は感じられない。基金の前に、まず開門すべきだ」と訴える。

     無駄な公費支出と言える制裁金について農水省の担当者は「払い続けてもいいと開き直っている訳ではない」と弁明する。11月、斎藤健農相が長崎・佐賀両県を視察し「基金での和解に全力を注ぐ」と強調したが、開門派漁業者とは面会しなかった。長崎地裁判決に対し、漁業者側は福岡高裁に訴訟参加と控訴を申し立てている。国が開門を強制しないよう求めた請求異議訴訟も係争中で、斎藤農相は「裁判の様子を見ながら(意見交換の時期を)慎重に検討する」と述べたが、和解のめどは示せなかった。

     諫干事業の歴史に詳しい宮入興一長崎大名誉教授(財政学)は「事業完成後9年もたつのに、海の再生を名目にした公共事業や制裁金支払いが続いている。諫干は本来、実施すべきでなかった事業の典型例だ。旧来型の公共事業を改め、開門調査の実施を含めて、農業・漁業も共生するような施策に大転換すべきだ」と話している。

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