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キャンパスNOW

新島襄が掲げた良心教育 「躍動する同志社」を共に創る

まつおか・たかし 1955年、奈良県出身。79年、同志社大学工学部機械工学科卒。87年、工学博士の学位受領(同志社大学)。98年、同工学部教授。2010年4月、同副学長。16年4月から同志社大学長。
いのうえ・のりゆき 1935年、京都市出身。57年、同志社大学経済学部卒。大阪金属工業(現ダイキン工業)入社。専務などを経て94年に社長。2014年から取締役兼CEO。11年から同志社校友会会長を兼務している。

同志社大の松岡敬学長と校友会長の井上礼之・ダイキン会長が対談

理想の大学へ 200年の大計

 卒業生33万人にのぼる関西の私学の雄、同志社大学が2025年の創立150周年に向けて動き出している。キーワードは「ALL DOSHISHA」。学生、教職員だけでなく、OB組織である校友会や同志社を志望する将来の仲間らが一体となって、幕末に世界に飛び出し同志社を創立した新島襄の思いを受け継ぎ、新しい時代をリードする同志社を築き上げていく狙いだ。先頭に立つ松岡敬学長と、校友会長で世界トップの空調機メーカー、ダイキン工業の井上礼之会長に、その思いを語り合ってもらった。(聞き手は毎日新聞大学センター長、中根正義)

     --新島襄は「キリスト教主義」による徳育教育、「自由主義」による教育・研究、「国際主義」による多様性を掲げて同志社を創立しました。創立150年に向けた「ビジョン2025」にもその思いが込められていると思いますが、狙いを教えてください。

     松岡 新島は勝海舟との対話の中で、自身が目指す理想の大学の完成には200年を要すると語りました。その意味からも創立150年は通過点として大きな節目です。戦前に自治の確立に苦しんだ多くの大学も、戦後には自由に学術研究を行い、さらに昨今の科学技術の進歩、グローバル化に伴い取り巻く環境が大きく様変わりしました。新島の建学の精神を守りながらも、今の時代に対応できる「躍動する同志社」を創出するため、6つのビジョンを設けました。今後は学長のリーダーシップでもって教学改革を進めます。

    必要なのは、「とがった人」

     --少子化が進み、今後、15年ほどで18歳人口が20万人減ると予測されています。それだけに、この十数年は人材育成が大切だと思いますが、グローバル化の中でどんな人材像が求められるのでしょう。

     井上 一番必要なのは、とがった人というか、好奇心旺盛、情熱的で感受性や洞察力が強い、先進性などの資質でしょうね。ダイキン工業は145カ国に展開しており、多様な民族や宗教、価値観に触れる中、海外で必要なのはこうした資質だと感じています。研究分野のことについては会社で教えられますが、それよりも人間性や個性を発揮して学生生活を送ってほしい。「ビジョン2025」には海外留学や外国人留学生とともに生き生きと学ぶキャンパスの姿が描かれていますが、大賛成です。

     松岡 多様な価値観を感受できる人物養成が本学の強みです。大学は専門教育に加え、幅広い教養を備えた人材の育成が求められます。同志社大学では、これまでも知性と品格を備えた人物を養成して来ましたが、今後はより一層現代社会の諸課題に対応する能力の涵養が求められます。やはりその中心はグローバル化。グローバルと教育・研究、グローバルと学生生活を掛け合わせて何が生まれるのか、今までの領域・垣根にとらわれず、新たな価値を創出したい。そうした視点での教学改革を目指します。142年前から脈々と受け継がれる3つの主義は、新島が世界に目を向けたからこそです。創立以来本学は常に世界の中の同志社であることを意識しています。

     --ダイキン工業では日本的なものを海外従業員にも教育していますね。

     井上 当社は売り上げの75%が海外、従業員7万人の8割が外国人です。コーポレートガバナンスでは米国式がスタンダードで、説明責任やコンプライアンスなどは米国に学ばないといけませんが、日本独自のものを否定することにはつながりません。労務管理や人材育成、ロイヤルティー、チームワーク、そして企業文化などは日本的なものを生かすほうがグローバルに成功すると考えています。当社は淀川製作所で40年間盆踊りを行い、地域の人らにも楽しみにしていただいていますが、海外でも4、5カ国で開いていて、米国では3万人も集まるほどの人気です。日本のものをアピールすることで外国人も親しみを覚えるんだなと感じています。他にも日本式経営を生かしたトヨタさんやキヤノンさんなどはバブル後でもさらに発展されておられます。

    誰も発想しなかったことを新たに生み出せるリーダーを

     --オール同志社を考えた場合、リーダーの育成とともに、これからはフォロワーシップも必要ですね。

     松岡 リーダーというのは牽引するというイメージです。本学が目指すリーダーはビジネスリーダーに限らず、学術、研究開発、地域社会等でも活躍できる人材です。混沌とする社会の中で、だれも発想しなかったこと、求めなかったことを同志社人が新たに生み出していく。もちろんご指摘の通りリーダー養成とともに、それを支える人材の育成も重要な課題だと認識しています。また本学には留学生も多くいますので、母国で、そして世界で知性と品格をもったリーダーとして活躍して欲しいと思います。

     --旧制同志社中OBで、ノーベル物理学賞を受賞した江崎玲於奈さんは、「戦前としてはめずらしく、同志社では外国人の教師とごく自然にふれ合うことができる環境があった。同志社は戦前に国際的な視点をもたらしてくれ、外国を意識する目を養うことができた」とおっしゃっています。井上会長の体験はいかがですか。

     井上 私も江崎さんと同じ感覚です。お世辞にも勉学に励んだとは言えない私ですが、会社に入ってからも、同志社に流れる気風に影響を受けてきたことを感じています。まさに、禅語の「霧の中を行けば覚らざるに衣湿る」です。それは自由闊達で強制されない、自主性を重んじる点。自己責任が身につきました。私が会社を率いるようになって進めた「人基軸の経営」や「フラット&スピード」「コアマン制度」「タイムカードの廃止」などはすべて、自主性を大事にする同志社精神が生み出したものです。おかげで退職率が低い会社になりました。

     松岡 私は大学から学びました。中高で受ける影響と大人になってからでは違うかもしれませんが、そこで得たものが財産になっているのは間違いありません。自由に学び、自由に研究できる雰囲気は国公立大にはなく、同志社ほど教育研究がしやすいところはないですね。学生の気質もそうですが、自由な環境が同志社らしさをつくっていると思います。

     --自由というのは京都の大学であることも大きいのではと感じます。ところで、同志社大学は、ドイツにEUキャンパスを計画するなど、欧州にも目を向けていますね。

     松岡 新島は岩倉具視使節団の通訳として米国から欧州に渡り、1884年に2度目の欧州視察で仏、独、露等8カ国を回りました。文化や大学の歴史など、米以上に欧州からまだ学ぶべきことはあると意識していたためだと思います。それだけに、同志社を発信する拠点を欧州につくることは200年の大計に向けて必要だと考えました。もちろんEUで今以上に優秀な留学生の確保を目指します。グローバルと言っても米国だけではなく様々な地域の価値観・文化があります。ユーラシア大陸の端と端、その間に中国があり、一帯一路が結ばれようとしています。我々が拠点を欧州に持つ価値は十分にあると思いますね。

     井上 欧州に同志社のキャンパスを設けるのは素晴らしい取り組みです。特に、私が会社経営で常に意識しているのが「グローカル人材」の育成ということですが、この点にも留意していただければなと思います。「グローカル」とは、グローバル社会におけるローカルの重要性ということです。文化、宗教、価値観はそれぞれの地域において異なるので、一律にグローバル人材を育ててもダメ。ものの見方や専門性、持ち味を含めて、価値観の違う一人ひとりをいかに生かすか。企業にとっては、それが大きな力になりますが、キャンパスにおいても、多くの国から価値観が違う人たちが集まることによって、同志社人が磨かれることがすごく大事だと思います。

     --オール同志社を含めて、改めてビジョン2025達成に向けた意気込みをお願いします。

     松岡 大切なのは校友を軸に同志社にかかわるすべての方々とも「躍動する同志社」を一体感を持ってつくっていくことです。社会から求められる人材を追求し、人種、文化、宗教など多様な価値観を受け入れるキャンパスを創り、ここから社会で隣人を愛し、そして敬う人物を輩出したいと思います。

     井上 校友会も各支部との連携を進め、一丸となって支援する動きができてきました。グローバル化の時代、大事なのはスピード。意思決定を早くすること。150年は通過点ですので、時代の変化に対応した試みを、失敗してもいいからやってみること。校友会としてもアイデアを出しながら、全面的に支援していきたいと考えています

    新島襄(1843-1890)

    コラム1 今も生きる新島の遺志

     函館市のベイエリアの一角に「新島襄海外渡航の地碑」が建つ。1864(元治元)年、21歳の新島が大志を胸に米に向けて雄飛していった地だ。近くには米国商船に小舟で向かう新島の姿を形取ったブロンズ像も建つ。見つかれば死罪という幕府の禁を犯してまで新島が米国を目指したのはなぜだったのか。

     上州安中藩(現群馬県)の藩士の長男として生まれた新島は、藩主の命で蘭学を学ぶようになる。その後、米人宣教師が著した漢訳聖書などと出会い、万物の「創造者」である神の存在を知る。同時に、西欧の自由主義、個人主義と、個人の自由がきびしく制限されている封建社会との差異を知り、米国渡航への思いを募らせたのは必然の流れだった。

     渡航に成功した新島は、ボストンのフィリップス・アカデミーで2年間学び、在学中に洗礼を受ける。卒業後はリベラルアーツカレッジの雄、アマースト大学で理学士の学位を取得。さらに、キリスト教の宣教師として帰国することを考えてアンドーヴァー神学校で学んだ。

     そうした米国での生活と学びを通じて、米では高等教育機関がキリスト教的人格教育、全人教育を通じて調和のとれた立体思考ができる人材を育て、彼らが米のさまざまな分野でリーダーになっていることに感銘。さらに、初代駐米公使の森有礼から正式な留学生として認められた新島は、岩倉具視使節団の団員として1年半、米と欧州8カ国の教育制度の視察を行ったことで、日本の近代化を進めるリーダー育成を目的とした高等教育の必要性を実感する。

     1875(明治8)年に帰国した新島は、宣教師として布教活動に打ち込む一方、京都府知事らの賛同を得、京都の旧薩摩屋敷跡を譲り受けて同志社英学校を開校。2年後には同志社女学校を設立し、大学設立の準備にまい進したが、志半ばで病に倒れ、90年1月に亡くなる。

     キリスト教を知ることで、個人の自由意思を認めない幕藩体制のくびきからいち早く脱却し、上からの近代化を急ぐ明治政府に対して「自治自立の人民」の育成こそが一国を維持すると考えた新島。才気にあふれ、独立心が旺盛な生徒を、型にはめずその特性を生かして「一国の良心」にまで教育することを目指したその教育方針は、グローバル化が進む現代において、一層その価値を高めているといえよう。

    同志社大今出川キャンパス

    コラム2 創立150周年へのビジョン

     「ビジョン2025」は、『学びのかたちの新展開』『キャンパスライフの質的向上』『創造と共同による研究力の向上』『「志」ある人物の受け入れ』『「国際主義」の更なる深化』『ブランド戦略の展開』--の六つの優先課題で構成される。

     学びのかたちの新展開としては、意欲ある学生が能力を伸ばしうる教育をより積極的に提供。これからの先行き不透明な時代に対し、学生自ら切り開いていく力を高めるのが狙いだ。教員や学生同士の対話により自ら理解を深める「課題解決型教育」や、インターンシップ科目をより一層充実。リーダー養成型プログラムや、大学院改革などにも取り組んでいく。

     また新島が理想とした多様性豊かなキャンパスの実現に向け、スポーツ・文化・社会活動などの正課外教育を推進。地域コミュニティーとの連携強化や、学生や留学生を支える奨学金制度の充実、学生寮の建設などを図っていく。

     特に、同志社の総合大学として強みが発揮されるのが、創造と共同による研究力の向上だ。現在、さまざまな学問領域で800人超の研究者が学術研究を進めており、知と知をつなげ、新たな知の創出を目指す。文理融合や領域横断による総合研究や、世界規模での産官学連携などを通じ、さらに研究力を高めていく。

     2020年度には、センター試験に代えて新たに大学入学共通テストが始まる。「志」ある人物の受け入れでは、新制度も意識しながら、高大接続連携プログラムなどを充実させる。さらに世界中の優秀な学生向けに、国際的教育プログラムや、海外修学経験者入試などを導入する。

     25年度には、留学経験を持つ学生比率を全学生の30%、外国人留学生の受け入れを全学生の13%に増やし、「国際主義」を推し進めていく。

     ブランド戦略の展開では、SNSを活用した情報発信や効果的な広報活動を促進する。卒業生が「同志社人」であることを幸せに感じる大学であり続けるよう、在学生との交流、卒業生同士の連携を深めていく。

    同志社大京田辺キャンパス

    コラム3 理化学研究所との共同研究スタート

     同志社大学は「地域・社会とともに歩む大学」として、2002年にリエゾンオフィスを設置するなど、産官学連携に力を入れてきた。

     今年5月からは、同志社大学赤ちゃん学研究センター(小西行郎センター長)と、理化学研究所(本部・埼玉県和光市)の健康医療データ多層統合プラットフォーム推進グループ(桜田一洋グループディレクター)が共同研究を開始した。自閉スペクトラム症の原因解明に向けて、全国10カ所の大学・病院とも協力し、妊婦及び胎児から、幼児期に至るまでの健康医療ビッグデータを収集していき、機械学習などの人工知能技術による解析を試みる研究をスタートさせた。

     この共同研究は、同志社大学学研都市キャンパスを拠点としており、国が推進する新たな価値の創造への参画として期待されている。

    ドイツ南部にあるテュービンゲン大

    コラム4 同志社に集う名門大学

     同志社の海外協定校数は現在44カ国182大学。昨春からはグローバル教育センターを開設し、受け入れ留学生や日本人学生の海外留学の教育ニーズに対応する。また今出川校地には、「スタンフォード日本センター」をはじめ、海外の有力大学が運営する日本語・日本研究の「スタディー・アブロード・プログラム拠点」として、4センターが設置されている。

     一方、ヨーロッパでの同志社の拠点として、ドイツ南部にあるテュービンゲン大学に計画中の同志社テュービンゲンEUキャンパス。実現に向けてすでに仮オフィスを開設した。テュービンゲン大学とは、1993年に今出川校地にテ大日本研究センターが置かれるなど、長年にわたり学術交流を行ってきた。

     EUキャンパスは立地的に、欧州各国からアクセスしやすいこともあり、今後欧州からの留学生誘致を強化していく。さらにインターネットを活用した遠隔地接続サービスを利用し、ドイツと日本の学生が直接ディスカッションするプログラムなども提供していく。

    世界各地にある同志社大の校友会組織

    コラム5 世界に拡がるネットワーク

     1890年に新島襄が亡くなった際、それまでの「アルムニ会」を「校友会」として発足した。会のロゴには、新島が米国に渡る時に乗り込んだ「ワイルド・ローヴァー号」をデザイン。新島が希望を胸に「大海原」にこぎ出したように、世界で活躍してほしいという願いが込められている。

     国内48支部、海外33支部、約33万人の会員が活発に交流を行う。また、会員から法人議員を選出、更に奨学金制度をはじめ様々な校友会活動を通じ、母校同志社の支援を行っている。

    番外編「中根」の目

     古都京都は全国有数の学生街である。市内には28の大学と10の短大があり、およそ14万7000人が学ぶ。市の人口は147万人。京都市民の10人に1人が大学生ということになる。

     そうした街を代表する私学が、同志社大なのである。リクルート進学総研が高校3年生を対象に実施している「進学ブランド力調査2017」によれば、関西地区では「校風や雰囲気が良い」、「おしゃれな」といった項目でトップに立っている(表1、表2)。

     約2万人が学ぶ今出川キャンパス近くを鴨川が流れ、緑豊かな京都御苑や相国寺に隣接する。総面積10万1000平方メートルの敷地には、歴史を感じさせる赤レンガの建物が建ち並ぶ。このうち、クラーク記念館や同志社礼拝堂など5棟が国の重要文化財だ。キャンパスが醸し出すイメージがブランドになっている。

     グローバル化、情報化社会の進展で、京都の魅力がこれまで以上に国内外に発信されている。同大には「スタンフォード日本センター」など協定を結ぶ海外有力大が運営する日本語・日本研究の拠点が四つあるが、その立地が海外大に大きな魅力になっていることは想像に難くない。

     週刊「サンデー毎日」と大学通信が全国約2000高校の進路指導教諭に行っている調査では、「偏差値や地理的、親の資力などの制約がない場合、生徒に勧めたい大学」として、私立大で全国6位に輝く(表3)。ポテンシャルの高さは進学校の教諭たちからも認められているといえる。課題は、悠久の時間が流れる古都の大学として、その地位に甘んじることなく、教職員たちが変化が激しい時代にどう迅速に対応していくかにかかっている。

     「田舎の学問より京の昼寝」ということわざがある。京都の文化や伝統に触れることで、知らず知らずのうちにさまざまな知識が身につくという意味である。国内生ばかりでなく、海外からの留学生も含め、古都で過ごした学生たちが創立者、新島襄の志に触れ、世界に雄飛し、躍動することに期待したい。【毎日新聞大学センター長・中根正義】

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