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描かれた鉄路

今回の作品 映画『秋刀魚の味』 監督・小津安二郎 東急池上線・石川台駅(東京都) 常にすれ違う人物たち

『秋刀魚の味』 監督/小津安二郎 (1962年) 写真提供/松竹

 「やっぱり、奥さんには優しくした方がいいのかな」「そうね、でも、あんまり優しいのも嫌ね」「そうですか、難しいな」「フフ……。あ、電車来た」。男前の三浦(吉田輝雄)と、美貌の路子(みちこ)(岩下志麻)が、夫婦の機微について言葉を交わす。映画界の巨匠、小津安二郎監督の遺作「秋刀魚(さんま)の味」(1962年公開)。この場面のロケ地である東急池上線・石川台駅(東京都大田区)の五反田方面行きホームを訪れた。一連の小津映画に通じる哀感とユーモアに加え、本作では残酷な「すれ違い」が描かれる。

 会社員の平山(笠智衆)は妻を亡くしており(明らかにされないが戦災ではないか)、結婚適齢期の娘の路子と次男との3人暮らしだ。長男の幸一(佐田啓二)は結婚し、妻(岡田茉莉子)と郊外の団地に住む。平山の旧制中学卒業から40年ぶりのクラス会で、かつて威張っていた教師の佐久間(東野英治郎)は老残の身をさらした。仕立てのよい背広をまとって運転手付きの車を乗り回す教え子たちにペコペコする姿は、戦前戦中の権威の…

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