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8年越しの花嫁

土屋太鳳さん、佐藤健さん「愛情を信じたからこそ生まれた奇跡」

「8年越しの花嫁 奇跡の実話」の1シーン=(C)2017映画 「8年越しの花嫁」製作委員会

難病「抗NMDA受容体脳炎」克服 実話映画化で主演

 「悪魔払い」されてきた難病「抗NMDA受容体脳炎」の女性患者が発症から8年後に病を克服し、回復を待ち続けた婚約者と結婚した実話を基にした映画「8年越しの花嫁 奇跡の実話」(瀬々敬久監督)が16日より全国で公開される。女性患者を演じるために、毎日新聞ニュースサイト連載の闘病動画などを見て「役作りに取り組んだ」土屋太鳳さんと婚約者役を熱演した佐藤健さんに、本作にかける意気込みなどを聞いた。【聞き手・照山哲史】

 <抗NMDA受容体脳炎は、脳内で興奮刺激を伝える役目を担う「NMDA受容体」が、卵巣奇形腫などによる免疫反応でできた抗体からの攻撃を受け、機能が低下して発症する。頭痛など風邪に似た症状で始まり、数日で幻覚や幻聴などの精神症状が表れる。けいれん発作や意識障害を伴い、昏睡(こんすい)状態に陥ることもあり、自分の意思と無関係に体が奇妙に動く症状も特徴的だ。1973年に公開された米国映画「エクソシスト」の主人公は、この病の患者だったとされる。2007年に病気の仕組みが解明されるまでは「悪魔払い」されてきた病でもあった。佐藤さん、土屋さんは今回の映画出演の申し入れによって、初めてこの病気を知った>

毎日新聞ニュースサイトの闘病動画を見て演技の参考に

 --本紙ニュースサイト連載などで闘病動画をご覧になったそうですが、どのような感想を持ちましたか。

 佐藤さん 壮絶だと感じました。いつも笑顔だった恋人が全くの別人になってしまう。症状はとても怖いものだが、なんとかして助けてあげたいという気持ちになるのだと思いました。

 土屋さん 患者役を演じるので、どういう症状が表れるのかという思いで見ました。目の動き、口の動きなど、それぞれのシーンにどう生かしていくかという視点で。

「8年越しの花嫁 奇跡の実話」に主演した土屋太鳳さんと佐藤健さん=丸山博撮影

 <映画は、病気の仕組みが解明されたころ(06年末~07年初め)に発症した岡山県内に住む中原麻衣さん(35)=当時24歳=が、婚約者の西澤尚志(ひさし)さん(37)=当時26歳=をはじめ、家族の献身的な支えによって病を克服し、8年後に結ばれた実話に基づく。結婚式場の運営会社がホームページにアップした2人の式典動画が大反響を呼び、夫妻の共著「8年越しの花嫁 キミの目が覚めたなら」(主婦の友社刊)が15年7月に出版された。映画は原作を元に脚本化。夫妻の地元・岡山でのロケを中心に今年1月8日から撮影を開始し、バレンタインデーの2月14日に撮り終わった。夫妻はこの間2回、撮影現場を見学している。佐藤さんと土屋さんは昨年末に岡山入りした際、初めて夫妻にあいさつをした>

 --それぞれの印象を聞かせてください。

 佐藤さん (尚志さんは)器の大きい方だなと感じました。第一印象は「いつも笑っている人」。笑顔が魅力で、今回役作りするうえで、「笑顔」はキーワードになりました。

 土屋さん (麻衣さんは)すごく可愛らしくて、明るくて、それでいて豪快な方だなと思いました。愛情深い、思いやりのある方で時々、無料通信アプリ「LINE(アプリ)」でメッセージのやり取りをしますが、その文章にも可愛らしさや豪快さがあふれているんですよ。お料理を一緒に作ろうという話になって、撮影期間中にご自宅へ行きました。

 --これはおいしかったという料理は?

 土屋さん ハンバーグです。でも、タマネギを入れるのを忘れてしまったんです。なんか小さいなと。刻んだまま、冷蔵庫に入れっぱなしになっていました。

 <映画は、2人が合同コンパで出会う場面から始まる。麻衣さんの尚志さんに対する印象は最悪だった。つまらなそうにしていたからだった。2次会への出席を断り、1人で帰ろうとする尚志さん。追いかけた麻衣さんはアーケード下の路上で「来た以上は楽しそうにしていればいいじゃないですか」と言い放ち、尚志さんは驚く。その日はただ腹の調子が悪かっただけなのだ。理由を知った麻衣さんは……>

「8年越しの花嫁 奇跡の実話」の1シーン=(C)2017映画 「8年越しの花嫁」製作委員会

 --役作りで難しいなと感じたところは。

 佐藤さん 1人で演じるシーンが難しかった。2人のシーンは力も抜けて、麻衣さんへの思いがあればという感じだったからです。麻衣さんが「意識不明になった」と電話で聞くシーン、病院を抜け出して行方が分からなくなったと聞く場面など、1人で演じる時が難しかった。

 土屋さん 映画全体を通じて難しかったです。病気もそうですが、初めて尚志さんと出会ってのアーケード下でのシーンも、ここで尚志さんに恋をしてもらわないといけないので、すごく難しい場面でした。セリフも酔った勢いでどれだけ強く言うかとか考えたので。

 <映画の撮影はほぼストーリーの順に進んだ。出会いからプロポーズ、結婚式場の予約と順調に愛をはぐくむ2人だったが、突然麻衣さんが発症してしまう。一時は心肺停止状態になり、昏睡状態に。尚志さんは毎朝、出勤前にバイクで病院を見舞う。式場もキャンセルせずに、同じ日を予約し続けた>

 --病気の症状を演じるのは相当に大変だったのでは。症状を再現するための特殊メークもありました。

 土屋さん 記憶がなくなっていくシーン、リハビリのシーン、ベッドで寝ている時に病気特有の口の動きをするとか難しい演技の連続でした。寝ていてけいれんする場面でも、普段意識しない神経を使っているなと感じました。なるべくまばたきもしないようにするなど、表面的なものではなくて、体の内側から出てくるものです。寝ている時、寝返りを打つ時も演技の練習をしていました。演技していて私自身が相当に苦しかったので、麻衣さんは本当につらかっただろうと思いました。リハビリの演技も汗びっしょりになり、体への負担はすごいです。病気のこともあって、体重もコントロールする必要がありました。撮影期間中に4キロぐらい減らしました。

「8年越しの花嫁 奇跡の実話」の1シーン=(C)2017映画 「8年越しの花嫁」製作委員会

信じることを実行していくことの大切さを感じ取ってほしい

 --意識のない相手に話しかけるシーンもありました。意識が回復すると次はリハビリでした。

 佐藤さん リハビリができるようになってからは、とてもうれしかっただろうと。元々意識が回復しないかもしれないというところから始まっているので、とても幸せな日々だったと思って演技しました。意識がない状態の麻衣さんと2人のシーンは、この映画において最大のラブシーンになるべきだと思っていました。意識のない人を待っているのではなくて、そばにいて一緒にいるという感覚です。毎朝、麻衣さんの病室に行く時も、会いに行くということで、悲しい顔ではない。笑顔だ。病室での2人のシーンがこの映画ではとても大切なポイントと思って演じました。

 <抗NMDA受容体脳炎の正式なデータとしては、国内での年間発症率は300万人に1人とされる。病気が解明されて10年たった今では、医師の間に周知が進み、年間約1500人が発症しているとの推計もある。ただ、患者数が少ないだけでなく、意識のない状態が長く続く患者もいて、患者本人と意思の疎通ができない家族も多い。患者や家族は孤立しがちなため、情報共有などを目的に今年6月に患者会が設立されている。問い合わせは携帯電話090・7630・1945(代表の片岡美佐江さん)、メールkounmdajnouen2017@gmail.com>

 --この映画を通じて最も訴えたいことをお願いします。

 佐藤さん 尚志さんは、麻衣さんの意識が戻らないかもしれないと言われても、それを受け入れずに、いつか絶対意識が戻ると信じて行動し、そばにいたのだと思います。自分の気持ちに正直に、信じることを実行していくことの大切さを感じ取ってほしい。

 土屋さん この物語は、愛情を信じたからこそ生まれた奇跡だと思います。生きていることのすばらしさとともに、愛情を信じることの大切さを感じてほしいなと思います。

試写会を見た患者の母親「娘の姿と重なる」

 昨年12月の「抗NMDA受容体脳炎」を扱った連載(https://mainichi.jp/articles/20161213/k00/00e/040/160000d)で取りあげた関西地方に住む患者、洋子さん(仮名、21)の母親(51)は、試写会で見た映画の感想を記者にメールで寄せた。

 「映画の中心テーマは“奇跡のラブストーリー”なのに、親としては、病気の描写に目がいってしまうのですが、土屋太鳳さんは、体当たりでリアルに演じてくださっていました。最初のパニックから発作、不随意運動、意識回復後の表情など、ひとつひとつの様子が、その時々の娘の姿と重なり合い、冒頭から号泣しました。娘にも当時彼氏がいましたので、佐藤健さんの演技も、心にしみこんできて、涙があふれました。土屋さん、佐藤さん、そして私と同じ母親を演じてくださった薬師丸ひろ子さん、難しい役を、丁寧に丁寧に演じてくださって感謝しています」

 洋子さんの近況も添えられており、「最近の娘は、自分でお化粧したり、タブレット端末『iPad(アイパッド)』でゲームをしたり、食事の前には家族の食器を出して並べてくれるなど、能動的に過ごせる時間が少しずつ増えてきました。日記も、就寝前に書いているのですが、その日の朝にあったことを記憶していて書くことができています。日々の変化を心強く思いながら、焦らずに前に進んでいきたいなと思っています」とあった。


さとう・たける 1989年3月生まれ、埼玉県出身。2008年のTBSドラマ「ROOKIES」や、10年のNHK大河ドラマ「龍馬伝」、映画「何者」「亜人」などに出演。15年に主演したTBSの「天皇の料理番」で第24回橋田賞、第42回放送文化基金賞演技賞を受賞した。


つちや・たお 1995年2月生まれ、東京都出身。15年のNHK連続テレビ小説「まれ」でヒロイン役。16年に第39回日本アカデミー賞新人俳優賞、エランドール賞新人賞を受賞。15年の映画「orange-オレンジ-」、TBSドラマ「下町ロケット」などに出演。18年には映画「となりの怪物くん」「累-かさね-」の公開が控えている。

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