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著者インタビュー 加藤シゲアキ 『チュベローズで待ってる AGE22』

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作家性を表現するのは作品 “自分の文体”にはこだわらない

◆『チュベローズで待ってる AGE22』加藤シゲアキ・著(扶桑社/税別1100円)

 作家デビューから5年。上下巻合わせて500ページを超える長編を上梓(じょうし)した。

「足かけ2年。今回は、冷静に作品を育てる時間が持てました」

 就活に失敗し、自暴自棄になった主人公の光太は、街で出会ったスカウトの言葉に乗ってホストクラブ「チュベローズ」へ。金と欲と愛が渦巻く場所で生きる光太に、悲劇が起こる。10年後、ゲームクリエーターとして世間の評価を受ける光太は、10年前の真実に向き合うことに。人の弱さや孤独、残酷さを繊細に描き、謎解きの妙をからめたエンタテインメント小説だ。

 上巻は『週刊SPA!』で連載された「AGE22」。下巻「AGE32」は書き下ろし。連載小説を手がけるのは初めてだった。

「根っからのサービス精神なのかな。とにかくおもしろいものを毎週書きたいと思っていました。でも、ところどころあえてリズムを崩すような展開を作ったりもして。『このシーン、いる?』と思われるかもしれないけど、あとあと効いてきます」

 デビュー作から顕著なのが、伏線の広がりと多層性。それが、クライマックスに向けて鮮やかに回収されていく。ページを繰る手が止まらない。

「プロットは大まかにしか作っていません。決め込んでも変わってしまうので。でも、自分で書いたモチーフや伏線は全部頭に入っています。だから、何を書いたか前に戻って確認するってことはないですね。学生のころから短期記憶には強いんです」

 言葉選びや文章表現については、読みやすさを意識している。似たような表現は使わない。だが、自分の文体には固執しない。

「作品に合わせて文体を作る作家でありたいんです。だから、これが自分の文体というのはない。作家性を表現するのは作品であって、文体ではないと思っているんです」

 アイドルグループ「NEWS」の一員でもある。デビュー後、グループの形が変わる中、自分には何ができるだろう、何がしたいだろうと考えて、“書くこと”にたどりついた。一作目を書いていたのは3・11のさなか。自殺の場面を描くのは躊躇したという。

「でも、ハッピーエンドだけを描くのも押しつけがましいと思ったんです。小説を書いたからといって、出版される保証もなかったし、出したとしても絶対叩かれると思っていたので、後悔のないようにやり尽くそうと。ここでがんばれなかったら、その程度だなって感じでしたね」

 単行本としては5作目。「作家としての名刺代わりになれば」という思いで挑んだ。所属するグループのためにできることをと思って書き始めたデビュー時とは、気持ちも変わってきた。

「グループを背負って書くという感覚はなくなりましたね。だからかな、単純におもしろいものを作りたいという気持ちが強くなったのは。これだけ書いたら疲弊するかと思ったけど、やっぱりまた書きたい。テーマが尽きないんです」

 エンタメを自任しつつも、描きたいのは人間の心。タイトルの「チュベローズで待ってる」。誰が、誰を、待っているのか。その真実は、大人の心を静かに揺さぶる。(構成・佐藤恵)

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加藤シゲアキ(かとう・しげあき)

 1987年、大阪府出身。青山学院大卒。2003年、「NEWS」として活動開始。タレント、俳優として活躍するかたわら、12年に『ピンクとグレー』で小説家デビュー。著書に『閃光スクランブル』『傘をもたない蟻たちは』など

<サンデー毎日 2017年12月24日号より>

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