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華恵の本と私の物語

/17 賢者の贈りもの

 「あ、ロックフェラーセンターが、うつってる。なつかしい」

     電話でんわこうで、ははがテレビの音量おんりょうげる。

     かつて家族かぞくみんなでんでいた、ニューヨーク。わたしは6さい日本にっぽんたので、ははほうがたくさんのおもをもっている。

     「ふゆ、ちょうどこの、ロックフェラーセンターのあたりをあるいていたら」

     このはなしはじめてく。わたしがまだ2、3さいころはなしらしい。

     「クリスマスなのに、おかねがなくて。おも気持きもちでおみせのショーウインドーをあるいていたら、ふいに、まえにヒラヒラとなにかのかみってきたんだよ。ひろってみたら、なんと20ドル紙幣しへい

     「それ、いつごろ?」

     「ちょうどクリスマスイブのだったんだよ。なんだったんだろう。そらからおかねってくるって……」

     うそみたいな、ほんとうのはなし

     かみさまって、やっぱりいるのかも。

     街中まちじゅうが、イルミネーションでかがやいているクリスマス。家族かぞく恋人こいびとたちはプレゼントをい、さむまち肩寄かたよせあってあるいていく。

     ははは、自分じぶんまれたくにでもない、アメリカでらしていた。おかねがなくて、大学院だいがくいんかよっている学生がくせいでもありながら、仕事しごともして、子供こどもふたりそだてていた。

     そらからってきた20ドルでははは、わたしとあになにかクリスマスプレゼントをったにちがいない。それは……なんだったのだろう。おもせない。

     「なんか、オー・ヘンリーの世界せかいみたい」

     はははそうってわらい、じゃあね、と電話でんわった。

      + + + +

     オー・ヘンリーの『賢者けんじゃおくりもの』も、クリスマスイブのはなしです。

     あるわか夫婦ふうふが、おかねがなくて、クリスマスプレゼントをえずにこまっていました。そこで、自分じぶん一番大切いちばんたいせつなものをって、そのおかね相手あいてへのプレゼントをうことにしました。ところがそのよる予想よそうできなかったことがきてしまいます。

     おたがいをだれよりもよくっていて、だれよりもあいしているからこそ、皮肉ひにくなことがこるのです。かなしいけれど、どんなおくものにもかなわないあいが、そこにはあるのです。

     わたしはむかしから、クリスマスがちょっと苦手にがてです。純粋じゅんすいにハッピーになりきれず、たのしいでも、そこにいないだれかにおもいをはせ、すこしだけ、さびしさをかんじてしまいます。

     本当ほんとうにいっしょにごしたいひとは、だれだろう。

     本当ほんとう自分じぶんおくりたいおもいとは、なんだろう。

     かんがはじめると、意外いがいこたえは簡単かんたんません。それはなぜか、大人おとなになって、どんどんむずかしいテーマとなってきました。


    賢者けんじゃおくりもの』

    O・ヘンリー・ちょ

    新潮文庫しんちょうぶんこ 529えん


     エッセイストの華恵はなえさんが、ほんにまつわるおもきなほん紹介しょうかいします

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